今から20年ほど前、新しい世紀に変わる頃。クルマに対する考え方も変わり始めていた。そんな時代のニューモデルのインプレッションを当時の写真と記事で振り返ってみよう。最終回となる第43回は「マツダ RX-8」だ。
マツダ RX-8(2003年)
マツダ待望の新型スポーツカー、RX-8が発表された。1999年の東京モーターショーに出展されたコンセプトカー「RX-EVOLV(エボルブ)」のスタイルを、ほぼ継承した、ユニークな4ドア4シーターのスポーツカーだ。先代のRX-7を始めとして、ほとんどのスポーツカーは2ドア&(ほぼ)2シーターというスタイルが定着している。だが、RX-8はあくまで大人4人がきちんと座れるスペースとユーティリティを持っている。
もちろん、独創的なセンターオープン式フリースタイルドアを採用したことも注目されるが、まずはエクステリアもスポーツカーらしいスタイリングだ。前後のブリスター風のボリュームあるフェンダーが、RX-8の存在感をアピールしている。スタイルこそ違うものの、歴代のRX-7やコスモにも通じる、スポーツカーに込めたマツダの気合いや魂を感じさせるデザインだ。
インテリアのクオリティも、従来のマツダ車よりは明らかにアップしている。スポーツカーとはいえタイトすぎず、心地良い空間を演出しており良い雰囲気だ。外観からはコンパクトに見えるキャビンだが、思ったよりは広い。センターピラーレスで後ろヒンジで開くセンターオープン式フリースタイルドアのおかげで後席への乗降は楽で、フロントシート下のフロアをへこませて後席のレッグルームを確保している。ヘッドスペースも十分だ。
新開発のロータリーエンジン「RENESIS(レネシス)」はコンパクトで自然吸気のため、エンジン本体はRX-7より60mm後方で40mm低くマウントされている。しかもサイド吸気/サイド排気のポートレイアウトとして、従来より高出力で低燃費を達成している。
今回は、ツインリンクもてぎのロードコースと、一般路を想定した周回路で試乗することができた。まずは18インチ タイヤを履いて250psを発生する「タイプS」から。9000rpmまで電気モーターのようにストレスなく回る。6速のマニュアルミッションはタッチがしっかりとしていて、ヒール&トゥを駆使してシフトダウンすると気持ちが良い。
サーキットゆえ公道で走るよりは少し高めの速度でコーナリングを試みると、控えめにロールしながら前後のサスが追従し、狙ったラインをトレースしてくれる。スポーツカーではあるが、ガチガチのサスペンションではない。ストロークもあるし、リアの新開発マルチリンクサスペンションのスタビリティが高いようだ。パワーステアリングは電動だが、前輪の設置状況をつかみやすいセッティングで好印象だ。
アクティブマチックと呼ばれるステアリングシフト付き4速ATの標準グレードにも乗ってみた。こちらの最高出力は210psだが、最大トルクはタイプSの22.0kgmより高い22.6kgmとなっている。5000rpm前後ではこちらのほうが力強く、ATとの相性も良いようだ。タイヤは16インチとなるので、乗り心地も良くなる。日常的にスポーツカーを使いたいなら、こちらで十分だろう。
新世代ロータリーエンジンを積んだ4人乗りのスポーツカー、RX-8はまったく新しい価値観をもった21世紀のスポーツカーといえるだろう。
■マツダ RX-8 タイプS 主要諸元
●全長×全幅×全高:4435×1770×1340mm
●ホイールベース:2700mm
●車重:1310kg
●エンジン形式:直2ローター・FR
●排気量:654cc×2
●最高出力:184kw(250ps)/8500rpm
●最大トルク:216Nm(22.02kgm)/5500rpm
●ミッション:6速MT
●タイヤ:225/45R18
●当時の価格:275万円
「懐かしの国産車」は、ひとまず今回で終了します。また機会をあらためて、少し違う時代の国産車も紹介したいと思いますので、お楽しみに!