アウディ A4アバント(2代目:2002年)
ミドルクラスのプレミアムワゴン、アウディ A4アバント。フランス語で「前進する、前に出る」という意味の「アバント」を車名に与えられ、ヨーロッパではメルセデス・ベンツ Cクラス ワゴンやBMW 3シリーズ ツーリングより売れている。昨年(編集部註・2001年)のフランクフルト モーターショーで発表された新型A4アバントが、いよいよ日本にやって来た。
「美しくなければアバントではない」という言葉にふさわしく、A4アバントはなかなかスタイリッシュだ。A4セダン同様、ボディは張りのある面で構成され、ダイナミックな印象を与える。ベルトラインをウエッジシェイプとし、ロングルーフは緩やかな弧を描く。リアエンドにはわずかにノッチが付けられ、従来型よりはリアゲートは立てられているものの、ライトバンには見られない微妙な角度で寝かされている。
ルーフレールの分だけ車高は高められているが、全長と全幅はセダンと共通。それでも、旧型よりは全長で60mm、全幅で30mm、ホイールベースで20mm(FF)伸ばされている。サイズアップは室内の広さにも反映されている。前後席とも旧型より広くなり、特に後席は現行型セダンよりルーフ形状のおかげでヘッドスペースが拡大している。
そしてラゲッジスペースは広く、使いやすくなった。旧型アバントはスタイルこそ美しかったが、ワゴンとしてはカーゴスペースは広くなかった。新型のスクエアなカーゴスペースは、フル乗車時で377L。折りたたみ可能なフロアボード下には65Lのサブスペースがあり、リアシートはもちろん分割可倒式。カーゴネットも装備され、リアシートを全倒すれば1184Lにまでスペースは拡大する。Cクラス ワゴンや3シリーズ ツーリングよりはわずかに狭いが、このクラスとしては標準的なレベルに達した。
コクピットから眺める景色は、セダンのそれとまったく変わらない。走り出しての印象も同様だ。今回は、2.0/2.0SE/1.8Tクワトロ/3.0クワトロのフルラインを、郊外路を中心に高速もまじえて試乗した。
2Lはセダンの日本導入時に比べマルチトロニックCVTが格段に洗練された。エンジンは2500rpm前後では少しゴロゴロした印象だが、3000rpm以上では快音を発して小気味良い。CVTのマニュアルモードはなかなか優秀で、これを駆使すれば高速でも十分なパフォーマンスを発揮する。SEとの差は本革シート&ウッドパネル、それにタイヤサイズ(2.0は195/65R15、SEは205/55R16)などだが、市街地ユースが中心で乗り心地を優先するなら2.0でいい。
1.8Tクワトロは、よりパワフルで軽快。スポーツワゴンというイメージにはピッタリだ。ティプトロニックはステアリングでもシフトできるが、エンジンは少々ノイジーだ。3.0クワトロは車両重量が1710kgもあり、重厚感の高い乗り味だ。低速からトルクたっぷりで、高速でも余裕のクルージングをこなす。A6に乗っている錯覚すら受けそうだ。
走りも使い勝手も満足できるスタイリッシュなA4アバントは、日本でもCクラス ワゴンや3シリーズ ツーリングの良きライバルになるに違いない。装備的には2.0でも十分。スポーティ派なら1.8Tクワトロ、ラグジュアリー派なら2.0SEか。3.0は最高だが価格もそれなりだし、予算に余裕があるならどうぞ!ということになるだろう。
■アウディ A4アバント 2.0SE 主要諸元
●全長×全幅×全高:4555×1765×1455mm
●ホイールベース:2645mm
●車両重量:1520kg
●エンジン形式:直4・DOHC・縦置きFF
●排気量:1984cc
●最高出力:96kW(130ps)/5700rpm
●最大トルク:195Nm(19.9kgm)/3300rpm
●トランスミッション:CVT(マルチトロニック)
●タイヤ:205/55R16
●車両価格(当時):416万円