「ターボS」と「4S E-ハイブリッド」を新たにラインアップ
2016年に登場した第2世代のパナメーラは、ポルシェらしいクリーンなエクステリアデザイン、そしてアップデートされたインテリアで人気を博した。しかしここ数年の間に、プレミアムブランドからライバルが次々に登場。AMG GT4ドアあるいはBMW8シリーズ グランクーぺなど、いわゆる4ドアスポーツクーペの市場が活況を呈している。それゆえに「スポーツカーとしてのさらなるダイナミック性能」と「リムジンとしてのよりラグジュアリーな快適性」の二極での進化はまさに必然だった。
ダイナミック性能面でのシンボルが、シリーズに新たに加わった「パナメーラ ターボS」と「パナメーラ4S E-ハイブリッド」である。ターボSはフェイスリフトを前に、オプション装備可能なミシュランカップ2タイヤを履いた以外は量産スペックで、ニュルブルクリンク北コースでタイムトライアルを敢行、7分29秒81を記録している。これは初代パナメーラターボが樹立したアッパークラスドアリムジンの最速記録を13秒短縮するものだ。
カモフラージュ車によるティザー試乗イベントから約3カ月、我々の前に現れたパナメーラのフルラインナップは新しいボディカラーのせいですべてがフレッシュに見えた。もっともエクステリアの変化はミニマムで、以前スポーツパッケージで用意されていたフロントスカートにLEDラインが加わったこと、そしてリア左右のコンビネーションライトが繋がった、などが目につく変化である。
まずはターボSのキーを持ってチェリーメタリックのボディに乗り込む。もっとも大きな変更は4L V8ツインターボエンジンで、過給圧アップによって80psと50Nmアップ、最高出力630ps、最大トルク820Nmを発生する。スポーツプラスモードでは0→100km/h加速を3.2秒、最高速度は315km/hと、スーパースポーツカーの範疇に入る。
サーキットでは2トンものリムジンがストレートでは息を呑むような加速と安定した高速走行、またコーナーではクイックで驚くほどのスポーティなハンドリングを見せたことに驚いた。これはアップデートされたPDCC(ポルシェ ダイナック シャシー コントロール)が大きく貢献している。このターボSはニュルブルクリンクンでの記録が示すようにトップスポーツリムジンとしてのポジションを確かなものにしていた。
より自然なフィーリングに近づいたPHEVモデル
続いて試乗したのは、PHEVの4S E-ハイブリッドだ。今回のフェイスリフトでは電池容量を14.1kWhから17.9kWhにアップして、EV走行レンジがWLTP値で54kmへと伸びている。一方で440psの2.9L V6エンジンと136psの電気モーターによるシステム総合出力を560psに引き上げて、0→100km/h加速は3.77秒、最高速度は293km/hに達する。性能値的には、後述するGTSとターボSのちょうど中間に位置する。
改善されたのはドライブモードで、EホールドとEチャージが選択可能になった。また回生ブレーキは効率が向上しただけでなく、フィーリングもずっと自然だ。
個人的にもっとも気に入ったのはホワイトボディが鮮やかな、パナメーラ スポーツツーリスモGTSだ。低回転域からのトルクの立ち上がり、そして高回転までスムーズに回る感覚には、往年の自然吸気エンジンのような楽しさがある。加えて改良されたエキゾーストシステムからは低く、澄んだサウンドが響いてくるので、スロットを踏み込むたびに身体の奥にアドレナリンが湧いてくる。パナメーラのラインナップの中では、玄人好みのモデルと言えるだろう。
2世代目のフェイスリフトは控えめではあるが、「最新のポルシェは最良のポルシェ!」の格言に偽りはなかったのである。(文:木村好宏)
■ポルシェ パナメーラ ターボS主要諸元
●全長×全幅×全高=5049×1937×1423mm
●ホイールベース=2950mm
●車両重量=2080kg
●エンジン= V8DOHCツインターボ
●総排気量=3996cc
●最高出力=630ps/6000rpm
●最大トルク=820Nm/2300-4500rpm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=8速DCT
■ポルシェ パナメーラ 4S E-ハイブリッド主要諸元
●全長×全幅×全高=5049×1937×1423mm
●ホイールベース=2950mm
●車両重量=2225kg
●エンジン= V6DOHCツインターボ
●総排気量=2894cc
●最高出力=440ps/5650-6600rpm
●最大トルク=550Nm/2000-5500rpm
●システム総合出力=560ps
●システム総合トルク=750Nm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=8速DCT