ポルシェ開発のV8 4Lツインターボエンジンを搭載
2016年に登場したアウディのSQ7とSQ8は、435psと900Nmを発生する4L V8ディーゼルエンジンを搭載。約2.5トンの巨体が静止から100km/hまでをわずか4.8秒で走り切る加速力を誇る、ハイエンドハイパフォーマンスSUVだ。
当時、発表に先立ってアウディはこの性能を誇示するために、1万600psのアルファジェット戦闘機と滑走路で加速競争を行い、300mまでを11秒で走り切り、コンマ4秒勝利した。もちろんその先はジェット機の方が速いのは決まっているが、アウディが示したかったのはV8ツインターボに加えて装備された48Vのパーシャルネットワークによって、搭載されたエレクトリックコンプレッサーによる低回転域からのブースト効果と強大なトルクだった。
このV8ディーゼルツインターボエンジンを搭載したSQ7とSQ8は19年にフェイスリフトを受けたが、20年に入ってガソリンエンジン搭載モデルが追加され、今回、その試乗会が開催された。ニューSQ7およびSQ8に搭載されるガソリンエンジンは、16年にポルシェが開発したコード825と呼ばれる4L V8ツインターボで、これまでポルシェやベントレーなどに搭載されてきた。
シリンダー挟角は90度、ボア×ストロークは86.0×86.0mmのスクエアタイプで、総排気量は3996cc。Vバンク内にレイアウトされた(ホットインサイド)2基のツインスクロールターボを搭載し、最高出力は507ps、最大トルクは770Nmを発生する。さらに気筒休止機構のCOD(シリンダー オン デマンド)も装備するハイテクエンジンである。
シングルフレーム内にSQ7はメッキ、そしてSQ8は艶消しブラックのダブルラメラグリルを採用。左右のヘッドライトユニットには破線状のデイライト兼ウインカーライトがインテグレートされている。チーフデザイナーのマーク・リヒテ氏によれば波線は「010101」のシンボルでデジタル化を表現したデザインだと言う。
大きなボディをものともせず俊敏な加速を披露
スタートボタンを軽く押すとV8ガソリンツインターボエンジンは短いクランキングとともにすぐに目覚め、振動もなく静かにアイドリングを始める。8速ATのDレンジからスタートすると、ディーゼルとは違った軽い吹け上がりと、スポーーティで好ましいエキゾーストサウンドを伴ってと俊敏に加速を始める。
SQ7、SQ8ともに、全長5.1m、車両重量で2.3トン近い巨体だが、0→100km/h加速はなんと4.1秒で走り切る。最高速はディーゼル同様250km/hでリミッターが介入する。クルージングを始めると90度V88が奏でる、独特の低く力強いスポーティなサウンドが響いてくる。CODは低負荷クルージングでスロットルを緩めると始まるが、アクティブエンジンマウントによって4気筒になってもドライバーはまったく気がつかない。
シャシも48Vのパーシャルネットワークによって起動するウルトラキャパシタで駆動されるアクチュエータによるEAWS(アクティブボディコントロール)でロールは瞬時にミニマムに抑えられる。また4WSは低速時には逆位相で取り回しを楽に、また60km/h以上では同位相としてアウトバーン上でのレーンチェンジなどで安定した走行を見せる。このガソリンエンジン仕様のSQ7およびSQ8は、今秋からドイツで発売を開始されるが、現時点で価格についてはまだ発表されていない。
最後に、この試乗会を終えた後で、アウディはビッグディーゼルエンジンの開発を中止したことがわかった。フォルクスワーゲングループ内のポルシェやベントレーもディーゼルエンジンの搭載を止めている。21年から実施される新排出ガス規制を通すには、コストが掛かりすぎるのが原因だ。(文:木村好宏)
■アウディSQ7 TFSI 主要諸元
●全長×全幅×全高=5067×1970×1743mm
●ホイールベース=2996mm
●車両重量=2200kg
●エンジン= V8DOHCツインターボ
●総排気量=3996cc
●最高出力=507ps/5500rpm
●最大トルク=770Nm/2000-4000rpm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=8速AT(ティプトロニック)
■アウディSQ8 TFSI 主要諸元
●全長×全幅×全高=5067×1995×1708mm
●ホイールベース=2996mm
●車両重量=2270kg
●エンジン= V8DOHCツインターボ
●総排気量=3996cc
●最高出力=507ps/5500rpm
●最大トルク=770Nm/2000-4000rpm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=8速AT(ティプトロニック)