ボルボ S60(2002年)
メルセデス・ベンツ CクラスやBMW 3シリーズを軸に、アウディ A4やジャガー Xタイプなどが群雄割拠するDセグメントの輸入車市場。これらのライバルたちに対し、ユーザー層をさらに拡大すべく、ボルボはS60にベーシックグレードの「S60(とくにグレード名は付かない)」を新たに設定した。
パワーユニットそのものは今までエントリーグレードだった2.4に搭載されているものと同じ、2.4Lの直5 DOHCノンターボエンジンだが、コンピュータ チューン(いや、デチューンと言うべきか)により、最高出力は140ps、最大トルクは22.4kgmとされている。2.4は170psと23.5kgmだったから、30psと1.1kgmパワーダウンされている。
2.4と比べて、エクステリアではホイールがスチールになったくらいでほとんど変わりはない。インテリアも、シート地が新素材のファブリックに変わったくらいだ。それでも車両価格は2.4より30万円も安い365万円と、入門用輸入車としても魅力的な価格設定となっている。
しかも、本革シート(運転席は電動アジャスト)、本革巻きステアリングなどをセットにしたレザーパッケージ(20万円)にCD/MDプレーヤー付きハイパフォーマンス オーディオとアルミホイールを追加した、初期ロット限りのEBO(アーリー バイイング オファー)パッケージが25万円で装着できる。
つまり、S60 2.4でもオプション設定となっている本革シートなどを装着しても、2.4より5万円安い価格でS60が手に入るというわけだ。これは、かなりお買い得なモデルといえるだろう。
今回の試乗車は、前述のEBOパッケージ装着車。本革シートに座り、電動でポジションを調整し、本革巻きステアリングを握ってスタートする。ベーシックグレードという引け目は、まったく感じることはない。
2.4よりも30psもパワーダウンされているのだから、走りは期待したいほうがいいだろうな・・・と思いつつ走らせていたのだが、絶対的なパワー不足を感じることはなかった。2.4と乗り比べれば分かりやすいのかもしれないが、単独で乗っている限りは、パワーは必要十分なレベルにある。
たしかに高回転まで回すと少しノイジーだし、パワーが盛り上がっていく印象は薄いが、2.4より最大トルクは1.1kgmしか落ちていないし、その発生回転数は1000rpmも低いので、常用域ではトルクがしっかり出ていて走りやすい。トランスミッションは2.4と同じ、マニュアルモードはない普通の5速ATだ。まあ、このクルマはDレンジに入れっぱなしでイージードライブを楽しむほうが似合っているだろう。
スポーティなルックスは上級グレードと変わらず、走りも十分。しかも装備を充実させながらライバルよりもお買い得と、ボルボ S60はベーシックグレードの追加で、ライバルに対しアドバンテージを得られるだろうか。
■ボルボ S60 主要諸元
●全長×全幅×全高:4575×1815×1430mm
●ホイールベース:2715mm
●車両重量:1490kg
●エンジン形式:直5・DOHC・横置きFF
●排気量:2434cc
●最高出力:103kW(140ps)/4500rpm
●最大トルク:220Nm(22.4kgm)/3750rpm
●トランスミッション:5速AT
●タイヤ:195/65R15
●車両価格(当時):365万円