近年、ベントレーは新世代パワーユニットとしてV8ターボを積極的に展開している。しかしトラディショナルな「W12」にはやはり、12気筒でなければ表現しきれない世界があった。圧倒的なラグジュアリー性能と驚異的なパフォーマンス、ともすれば相反する極限を、コンチネンタルGTは涼しい顔で悠々と、操る者に思い知らせてくれたのだった。(Motor Magazine 2020年12月号より)

ラグジュアリーカーとして模範的な快適性能

いやいや、だからといってコンチネンタルGTの乗り心地が粗暴だったわけではない。むしろその正反対で、極めてソフトかつスムーズな手触りのその奥に、どっしりと腰の据わった安定感を示す洗練された乗り味に、私は改めて感銘を受けたのである。きっと、クリックルウッド期のベントレーを現代の最新技術で再現すると、こんな足まわりになるのだろう。

洗練されているのはハンドリングもまったく同様。路面からの微振動などはシャットアウトしているのに、路面とタイヤが接している様子をハンドルを通じて克明に伝えてくる感触はラグジュアリーカーとして模範的なものだ。ハンドル系の取り付け剛性が極めて高いがゆえに、操舵感は驚くほど滑らかで軽い。それこそが、ドライバーに深い安心感と心地いい満足感をもたらす源といえる。

そして、絶大なパワー&トルクを生み出す、ベントレー製6L W12ツインターボエンジン。この「現在、世界でもっとも多く生産されている12気筒エンジン」は、市街地走行では「コトリ」ともノイズをたてない。

そのうえ、たっぷりとした潤滑油に浸かったムービングパーツが滑らかに作動している感覚はまるで精密な機械式腕時計のようで、ドライバーに深い喜びを抱かせてくれる。一方でスロットルペダルを大きく踏み込んだ瞬間、世界が一変するような「破壊力」を生み出す。このW12が持つもうひとつの「顔」だ。

とりわけ4000rpmを越えてからの加速感はすさまじく、6500rpmから始まるレッドゾーンまではまさにあっという間。ここで8速デュアルクラッチトランスミッションが素早くシフトアップするが、初めて体験するドライバーであれば、そのあまりに壮絶なダッシュ力に呼吸を乱し、呆然としても不思議ではない。

パワーを解放したときにW12エンジンが奏でるサウンドも実に魅力的。マルチシリンダーらしく、すべての燃焼音や機械振動などが平坦にならされて、まるでオーケストラの弦楽器のように滑らかな連続音を響かせる。

排気系のサイレンサーには電子制御されたバルブが装備されているので、エンジン音がはっきりと聞こえるのはBモードなしスポーツモードを選んだ時のみ。これとは対照的にコンフォートモードを選択すれば、W12はあくまでも静寂を貫き通す。これなら早朝や深夜に住宅地を走るのも安心だ。

画像: 英国のクラフトマンシップが生み出した究極の快適空間。

英国のクラフトマンシップが生み出した究極の快適空間。

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