911GT3と同排気量ながら完全新開発のエンジンを搭載
102.0×81.5mmのボア×ストローク値に、3995ccという排気量。いかに「新開発」と謳われようがそうしたさまざまなスペックが同値であることから、前出718GT4に搭載された水平対向6気筒エンジンが、これまでの911GT3用に由来するアイテムだろうと想像されたのも、むしろ当然のことなのかもしれない。
ところが「あにはからんや」で、サーキット走行にフォーカスをしてとくにスポーティなシャシチューニングが施された718GT4にミッドマウントされたのは、実は完全に新開発が行われた水平対向6気筒ユニットだった。
同排気量で共にモータースポーツ部門の息が掛かったユニットでありながらも、こうして911系とミッドシップモデルで(おそらくコスト的にも)異なる心臓部が搭載された背景には、「似たもの同士」のエンジンを搭載するに至ったこの段階で、改めて両者のヒエラルキーを明確にしておきたいという、マーケティング戦略に関しては殊更のこだわりを示すポルシェ社ならではの意図も感じられる。
実際、もはや500ps級のスペックを手に入れたGT3系用ユニットに対して、718GT4用の最高出力は420psとその差は歴然。レブリミットも、GT3が9000rpmと「常識外れの高回転」であるのに対して、718GT4では8000rpmと1000rpmもの差が存在する。率直なところ歯を食いしばって(?)アクセルペダルを踏み続けた際の官能度にそれなりに大きな差が開くのは、実際に体験済みの事柄でもある。
とはいえ、こうして「やっぱり911GT3にはこのモデルだけの孤高の世界があるよね」と強く実感させられるのは、得意とする舞台をサーキットに特化させたことで、そのパフォーマンスが「頂点勝負」で仕上げられているからでもある。
かくして、そんな限界領域で比較をしない限り、今度はさしたる動力性能の差も明らかにならないとびきりの速さを味わわせてくれるのが、718GT4用をディチューンした心臓の持ち主である今回主役の718ケイマン/ボクスターの「GTS4.0」なのだ。
すでにPDK仕様の追加設定も明らかにされているこのモデルだが、まずは最初にローンチされた6MT仕様が日本への上陸を果たしたので、さっそくテストドライブへと連れ出すことになった。