「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前の国産車は環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は「スバル インプレッサWRX STI Aライン」だ。

スタートのしやすさはもちろん、こうした走りの気持ち良さがいつでも引き出せるのはAラインの魅力だ。しかもシフトレバー手前にある「SIドライブ」を「iモード」にしておけば、加速感のピークが抑えられ、ジワッと滑らかで粘り強い走りを生む。いざと言う時は「S#モード」にすれば、急な右肩上がりの強力な加速感を楽しめる。中間の「Sモード」ではピークパワーがやや低いものの、低中速域の加速感に違いはなく、実用域での力強さはいつでも味わえる。

エンジンの排気音が抑えられていることや、ATを利用した4WDシステムゆえに、ギアノイズも少なく快適性も高い。乗り心地の良さはSTIとは思えないほどで、大きな入力に対してもスッとストロークして受け止めてしまう。もっともその結果、従来のダイレクトで力強い反力があったステアリングフィールは穏やかなものになっている。STIのネーミングからすると、もう少しダイレクト感を残しても良かったかもしれない。

オプションで装着されたブレンボのブレーキはダイレクト感があり制動力も高いが、Aラインのマイルドな乗り味を考えると、峠をガンガン攻めない限り、標準のものでも十分だろう。

このAライン、300psのパワーと快適性を併せ持つスポーツ4WDでありながら、ベース仕様は315万円と非常にリーズナブルな価格が設定されている。STIの過激さを求めると刺激は薄いが、ヨーロッパで鍛えられた走りの良さを期待するならぴったりの一台だ。誰もが安心してロングツーリングや日常でのスポーツドライブを楽しめる、新世代のSTIモデルと言えるだろう。

画像: ATと組み合わされたこともあり、STIの名が与えられているとは思えないほど乗り心地は良い。

ATと組み合わされたこともあり、STIの名が与えられているとは思えないほど乗り心地は良い。

■インプレッサWRX STI Aライン 主要諸元

●全長×全幅×全高:4415×1795×1475mm
●ホイールベース:2625mm
●車両重量:1490kg
●エンジン種類:水平対向4 DOHCターボ
●排気量:2457cc
●最高出力:221kW<300ps>/6200rpm
●最大トルク:350Nm<35.7kgm>/2800-6000rpm
●トランスミッション:5速AT
●駆動方式:フロント縦置き4WD
●10・15モード燃費:9.4km/L
●タイヤ:245/40R18
●当時の車両価格<税込み>:315万円

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