二面性を持つB3ビターボ、走りに一途なM3クーペ

さて今回はB3ビターボとM3クーペを直接対決させるためワインディグロードを選んだ。M3クーペの6速MTに対し、アルピナB3ビターボは6速ATと、ここでも両社の考え方に大きな違いを見せられた。M3クーペにも近いうちに2ペダルモデルが用意されると予測されるが、いつになるかはまだ明確には見えてこない。

現在はクラッチ付きではあるが、スムーズにつながるからクラッチペダルの操作はとても楽である。シフトレバーも日本のスポーツカーに比べると少しストロークは長めだが、シフトミスしにくく扱いやすい。

カタログデータではM3クーペ、B3ビターボともに0→100km/hが4.8秒だから動力性能的には互角である。

しかし、速さだけが優劣を決めるわけではない。そこには味や嗜好が存在する。M3クーペはエンジン回転数が上昇していくとともにトルクも盛り上がっていき、加速力も増していく。エキゾーストノートは気持ちのいい音を出すから、さらに上の回転数を味わいたくなる。なんと7800rpmからのゼブラゾーンはもちろん、最高出力を発揮する8300rpmまでも簡単に達するのだ。

M3クーペはこうやってエンジン回転数を上げることに歓びを感じるが、B3ビターボのエンジンは最高出力が5500〜6000rpmだからM3クーペとは大きな特性の違いがある。だから逆に回転数が上がっていなくても太いトルクで前に進んでいくのである。とはいっても、タコメーターのゼブラゾーンは7800rpmからで、レッドゾーンは8000rpmからと高回転も許容する。そして、最高出力の回転数を大きく超えても出力の低下はあまり感じられない。エンジン音、エキゾーストノートはますます気持ちのいい音になっていく。

B3ビターボは、ワインディングロードでは上りでも下りでも同じようにグイグイ加速していく。6速ATではあるが、ステアリングスポークの小さな突起を中指で押すことによってスウィッチトロニックと呼ばれるマニュアルシフトができる。右側がシフトアップで左側がシフトダウン。Dレンジのままでもこのスイッチは有効だ。Gの変化がなくなるとDレンジに戻るが、通常のBMWより戻るタイミングは遅い。スポーティな走りがわかっている人にはちょうど良い戻り方だ。

シフトレバーをDレンジから左に倒すとS(スポーツ)モードになる。そしてシフトレバーを前後に動かす、あるいはスウィッチトロニックを使うとM(マニュアル)モードになる。このときにはMモードに固定される。Dレンジでは表示されないが、Mモードではシフトインジケーターに現在のギア段数が表示されるようになる。

B3ビターボの乗り心地はとても良い。少し荒れた舗装を走っても19インチのファットなタイヤにもかかわらずゴツゴツとした振動や衝撃は伝えてこない。サスペンションがよく振動を吸収しボディが揺れを伝えない感じだ。さらにアルピナでモディファイされたシートはしっかりと座れ、表面は柔らかくクッション部のストロークもあるから、ここでの吸収力も大きい。

ワインディングロードでのタイトコーナリングはM3クーペよりB3ビターボの方がロール角は大きくなる。Rの小さなS字を通過するときにはロールの揺り返しを感じるが、そのほかの場面ではデメリットを感じなかった。

逆に、タイトなコーナーでもM3クーペはロール角が小さい。S字の切り返しでもロールのおつりはないし、次のコーナーへの準備がすぐに整うという安心感がある。B3ビターボに比べるとよりサーキット走行を主体としたハードな走行にマッチしているのかもしれない。

こうやって比べてみるとB3ビターボとM3クーペのどちらも強い個性があることがわかった。やはり右耳と左耳の存在と役割は違うのだ。

B3ビターボは今回撮影したセダンだけでなく、クーペやカブリオレも選べる。M3はクーペのみ、と書いたところにM3セダンが日本でも317日に発売というニュースが飛び込んできた。これでますます選択肢が増えてしまった。

B3ビターボはいつでも戦闘体制に入れるが、普段はそれを見せずにいる。でもイザというときには凄い性能を見せるタイプ。陰と陽を持っているといえる。M3クーペはチャンスさえあればいつでも戦いたいタイプだろう。いってみれば陽だけのタイプ。もしもこの2台から、購入する1台を選ぶとしたら、自分のドライビングスタイルを知らなければならないということになりそうだ。(文:こもだきよし/Motor Magazine 2008年5月号より)

画像: エルムウッドトリムによる高級感あふれるアルピナB3ビターボのインテリア。ステアリングにあるアルピナのエンブレムがひと際目をひく。ステアリングのラヴァリナレザーはオプション。もちろん、iDriveナビゲーションをオプション選択することも可能だ。

エルムウッドトリムによる高級感あふれるアルピナB3ビターボのインテリア。ステアリングにあるアルピナのエンブレムがひと際目をひく。ステアリングのラヴァリナレザーはオプション。もちろん、iDriveナビゲーションをオプション選択することも可能だ。

ヒットの法則

アルピナB3ビターボ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4525×1815×1420mm
●ホイールベース:2760mm
●車両重量:1590kg
●エンジン:直6DOHCツインターボ
●排気量:2979cc
●最高出力:370ps/5500-6000rpm
●最大トルク:500Nm/3800-5000rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:6速AT
●最高速:285km/h
●0→100km/h加速:4.8秒
●車両価格:995万円(2008年)

BMW M3クーペ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4620×1805×1425mm
●ホイールベース:2760mm
●車両重量:1630kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:3999cc
●最高出力:420ps/8300rpm
●最大トルク:400Nm/3900rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:6速MT
●車両価格:1003万円(2008年)

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