2008年3月、衝撃的なアウディA5日本発表から1カ月もたたないうちに、アウディの本命モデルと言うべき新しいA4が華々しく登場した。それは激戦のDセグメントにどんな変化をもたらしたのか。Motor Magazine誌ではA4上陸まもなく、A4 1.8TFSI、メルセデス・ベンツC200K、BMW320iの比較試乗を行っているので、その模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年5月号より)

A6にも似たA4のインテリアは品質と装備で他をリード

室内に目を移そう。MMIのディスプレイを中央の最上段に置き、そこを支点にドライバーを包むように展開されるL字型のA4のインパネは、A6などと似た雰囲気だ。アルミと木目、そしてレザーをふんだんに使ったインテリアはまさにアウディクオリティといったところで、機能的だがビジネスライクな面もある3シリーズ、豪華さを追い求めながらもコンソールパネルの樹脂の質感などにややチグハグな感も残るCクラスとは一線を画する高い質感を得ている。

唯一気になったのは操作系だ。シフトレバーの後方に位置するMMI操作部は、ジョイスティック状のメインコントローラーの周囲に各種のコマンドボタンがレイアウトされ、一見整然としている。しかし操作のたびにコンソールに視線を落とさなければならない点はこれまでと変わらないし、ジョイスティックもセンターノブの操作ストロークが小さく、操作にはかなり繊細さが要求される。

この種の操作系には三車三様の取り組みが見られるが、直感的に扱えて各操作の階層に下りていく時の操作やリカバリーが容易なことで、今のところメルセデス・ベンツのCOMANDシステムがややリードといった感じだ。

ところで、今回はA4 3.2FSIクワトロも同行したのだが、両者の間では装備レベルにかなりの違いがあった。最も大きな差異はアウディドライブセレクトの有無。これはダイナミックステアリングと呼ばれるアウディ流のアクティブステア、減衰力可変ダンパー、シフトプログラムといった走り味を変化させる機構を、コンフォート/オート/ダイナミック、さらにはインディビデュアルという個別にセッティングできる機構。これがFFの1.8TFSIには搭載されていない。オプション設定であるのであれば、1.8TFSIでも選択できてもいいはずだが。

室内の居住性は、A4の前席は明るく開放感がある。しかし運転席の足下空間はちょっとタイトだ。エンジンのアウトプット側からフロントアクスルへUターンするドライブシャフトが右側を通り、それが側壁にやや大きめの膨らみとなって張り出しているからである。ただ、左足に干渉して来るようなことはないし、ペダルも全体がやや右に寄っているものの、ドラポジそのものが右に偏向するようなことにはなっていない。しかも今回試乗した1.8TFSIはマルチトロニック(CVT)で2ペダルだから大きな問題はない。それでもブレーキペダル左側のスペースはあまり余裕がなく、ポジションの自由度が少ないことは指摘しておきたい。

もっとも、こうしたコクピットの足下スペースは、FR系でもけっこう苦労している部分である。Cクラスなどもその通りで、太めのミッションケースがペダルルームを圧迫しており、ポジションの取り方いかんでは左足の脛が側壁に干渉することがある。

この辺の造り込みは3シリーズが見事だ。トランスミッションの張り出しはやはり相当なボリュームがあるものの、乗員スペースを上手く作り出すテーパー状とすることで、身体にぴったりとフィットしながら多少ラフな姿勢も取れる密度感の高いパッケージングを実現している。

密度感と言えばリアシートもそう。3シリーズはこのセグメントでは最も全長が短いにもかかわらず、十分にリラックスできる居住空間を確保している。この辺はスポーツセダンとしてパッケージングを磨き込んできたアドバンテージと言えよう。

対するCクラスは、右ハンドルの場合トーボードがかなり後退している感じ。これもエンジンの搭載位置を後方に移して前後重量配分の理想化を図った結果だと思うのだが、ペダルで身体の位置を合わせるとシートポジションは後ろ寄りとなり、意外なほど後席の足下スペースを圧迫してしまう。

では、新型A4の後席はどうか。ホイールベース、全長ともクラス最大級となったのだから、当然リアシートも余裕を増しているはずと思ったが、レッグルームの拡大はさほど大きくはない。フロントシートバックの形状を削り込むなど涙ぐましい努力までして得られた後席スペースは、3シリーズとほぼ同等のレベル。ホイールベースの拡大はフロントアクスルの前寄せに大半を費やす結果となり、居住性の向上にはあまり振り分けられなかったわけだ。

画像: 短いフロントオーバーハングと長いホイールベースの絶妙なプロポーション、まるで塊のような剛性感を持つBMW320i。

短いフロントオーバーハングと長いホイールベースの絶妙なプロポーション、まるで塊のような剛性感を持つBMW320i。

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