2008年3月、衝撃的なアウディA5日本発表から1カ月もたたないうちに、アウディの本命モデルと言うべき新しいA4が華々しく登場した。それは激戦のDセグメントにどんな変化をもたらしたのか。Motor Magazine誌ではA4上陸まもなく、A4 1.8TFSI、メルセデス・ベンツC200K、BMW320iの比較試乗を行っているので、その模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年5月号より)

格段に進化の見られる回頭性とライントレース性

となれば、興味の対象はアクスル位置の変更が動的性能にどういった影響を与えたかであろう。さすがにこの部分では新型A4に格段の進化が見られた。

これまでのA4は十分にフロントに荷重を移しながらステアリングを切り込まないと、かなり頑固なアンダーステアを経験することが多かった。しかし新型はノーズの入り方が格段に軽快。しかも追い舵を与えるようなシチュエーションでもさらにノーズが内側に入ろうとする、幅のあるコントロール性までも身につけている。

ちなみに、今回テストした1.8TFSIはFFモデルということもあって、前後の軸荷重はフロント890kg、リア620kgと依然としてフロントが重い。しかし先代はフロント軸重が900kgを切ることはなかったから、これでも前後重量配分はかなり改善されたと言っていい。そこにアウディがこれまで苦心して積み上げてきた「フロントヘビーを曲げる技術」が生きていることで、新型A4はFFモデルでもかなり快活なハンドリングを手に入れているというわけである。

乗り心地もA4は劇的なまでに進化している。フロントサスペンションを相応に締め上げる必要のあった先代は、路面状況によってヒョコヒョコとした上下動を感じることもあったが、新型はフラットでしなやかな上質な乗り味になっている。これは重量配分の適正化に加え、ホイールベースの延長も大きく効いているはずだ。

さらにもうひとつ、FFとクワトロでの味わいの差が、以前ほど激しくなくなったのも魅力だ。先代のA4はクワトロではステアフィールから乗り心地までプレミアムカーらしいしなやかさが感じられたが、FFモデルは全体の感触がドライで、まるで車格が異なるような印象すらあった。ところが新型は格段にしっとりとしたステアフィールを中心に、3.2FSIクワトロと大差を感じない上質な感触に変化していたのである。ハンドリング、乗り心地、そして操作系の感触。これらが全体にアップグレードしたことによって、新型A4はFFモデルさえもプレミアムサルーンの新境地を切り開いたと言っていいようだ。

では、こうした新型A4と、C200、320iを比較するとどうか。ドライビングテイストはFFとFRでやはり大きく異なる。FRは操舵輪と駆動輪が異なるためステアフィールはやはり澄んでいるし、アクセルとステアリングの駆け引きで姿勢をコントロールできる自由度もはるかに高い。

320iとC200では、キビキビとした動きで320iが上。やや動きは重いが限界域まで極めてコントローラブルで、しかも安定感が抜群に高いのがC200だった。

しかしこれらの2台に対し、新型A4もかなり善戦している。コントロールの自由度ではさすがに一歩譲るもののの、回頭性とその後のライントレース性が向上したことにより、こちらも十分に楽しめるスポーツセダンに仕上がっているのだ。フロントの入りの良さに加えて、刷新されたリアサスペンションも高いロードホールディング性能を持っており、コーナリング速度は3車中最も高いという印象を持った。

最後にエンジンに触れておこう。1.8TFSIはこれまでの2.0Tとは設計の異なる新エンジン。低回転域からトルクフルで、高回転域までそれが衰えないのが魅力だ。

C200も同じ1.8Lの過給エンジンながら、こちらはスーパーチャージャーを用いる。そのせいか低速域の力感はかなりのものだが、上まで回してもアウディのような伸びの良さは味わえない。

320iは2L自然吸気でバルブトロニックを採用。過給エンジンと比べても見劣りしない低速トルクを持っている点は高く評価できるのだが、中高速域の力感はやはり劣る。したがって320iをワインディングで速く走らせようとすると、ロスの少ないクレバーな運転が求められた。

というわけで、スポーツセダンのボトムエンドとして、それぞれ持ち味と魅力があるのだが、動力性能面で最も有利だったのはアウディA4の1.8TFSIであった。ただ、組み合わされるマルチトロニックCVTは、以前の物に比べるとスリップ感や速度と回転上昇の関連性が格段に向上し、普通に走る分には良いのだが、マニュアルシフトを駆使してワインディングを攻めると、やはりCVT特有のダイレクトさに欠ける部分が露呈した。

とは言え、それが新型A4の魅力を削ぐことにはならない。それほどまでにこのクルマは長足の進化を遂げたのだ。Cクラスや3シリーズに伍して戦える魅力を備えたことで、Dセグメントの行く末はますます波乱に富んだものとなるのは間違いないだろう。(文:石川芳雄/Motor Magazine 2008年5月号より)

ヒットの法則

アウディ A4 1.8TFSI 主要諸元

●全長×全幅×全高:4705×1825×1440mm
●ホイールベース:2810mm
●車両重量:1510kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1798cc
●最高出力:160ps/4500-6200rpm
●最大トルク:250Nm/1500-4500rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:CVT
●車両価格:419万円(2008年)

メルセデス・ベンツC200コンプレッサーアバンギャルド 主要諸元

●全長×全幅×全高:4585×1770×1445mm
●ホイールベース:2760mm
●車両重量:1490kg
●エンジン:直4DOHC+SC
●排気量:1795cc
●最高出力:184ps/5500rpm
●最大トルク:250Nm/2800-5000rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:5速AT
●車両価格:473万円(2008年)

BMW 320i 主要諸元

●全長×全幅×全高:4525×1815×1425mm
●ホイールベース:2760mm
●車両重量:1460kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1995cc
●最高出力:150ps/6200rpm
●最大トルク:200Nm/3600rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:411万円(2008年)

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