2007年9月のフランクフルトでのショーデビュー、2008年2月のモナコでの国際試乗会を経て、2008年4月に初代ジャガーXFが日本に上陸した。伝統とモダンを融合させながら、ジャガーは生まれ変わろうとしていたが、その新しい「ジャガーネス」とはどういうものだったのか。今回はその試乗記を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine2008年6月号より)

ジャガーの今後はきっと明るい

大いに先走って言ってしまおう。2008年もまだ四半期が過ぎただけの段階にもかかわらず、早くも本年最もインプレッシブなモデルが登場した、と。

ひと足早く、モナコで乗ったときからその予感が強くあった。時期的にインドのタタ社による買収が本決まりとなり、あとは発表を待つのみといったタイミングであったにもかかわらず、われわれプレスの関心は、ただこの新しいスポーツサルーンの出来にのみ集まった。親会社が変わることなど、大したニュースじゃなかったのだ。

本当に最近の英国車は素晴らしいと思う。ブランドというブランドが根こそぎ買い取られ、純粋に民族資本の伝統的ブランドは皆無。端から見ればイギリスの自動車産業はもう終わっている、と思われてもおかしくない状況だ。

はたして本当にそうだろうか。確かに70年代以降のブリティッシュメーカーはこぞって経営危機に陥り、製造業としての矜持を失ったかに見えた。伝統だけにすがったモノ造りがグローバル化する世の中にキャッチアップできず、ただただ己の地盤沈下を見守るほか術がなかったのだ。

ところが、ブランドごと外国資本に買い取られ、リターンを期待する戦略的な資本投下を受けて、いくつかは見事に蘇っている。フォルクスワーゲンのベントレー、BMWのMINIとロールスロイス、そしてフォードのランドローバー/アストンマーティン(昨年、アメリカ/イギリス/クウェートの企業連合に転売)の、最新モデルをチェックしてみれば、ただちにその意味が理解できるはずだ。

そしてフォード傘下のジャガーもまた、タタ社への売却を前に、その事実を霞ませるほど素晴らしいクルマを世に送り出してみせた。金は出すが口は出さぬ方針であるならば、これをベース(具体的にはXKおよびXF)にジャガーの今後は期待大であろう。

初試乗から約2カ月。待ちに待った(と言っても輸入車としては異例に早かったが!)日本仕様が上陸した。用意されたグレードは4種類。下から3L V6を積む3.0ラグジュアリーと同プレミアムラグジュアリー、4.2L V8、自然吸気の4.2プレミアムラグジュアリー、そしてスーパーチャージドV8のSV8である。組み合わされるのはすべて6速ATだ。

スポーツサルーンであることの期待は、2つの事実によってまずはもたらされる。1つめは、AピラーとCピラーの角度がクーペのXKと同じであるという事実。2つめは、シャシそのものの構成をそのXKから移植しているという事実である。サルーンでありながらスポーツクーペに近いルックスと、スポーツクーペから拝借した足回りを持つというわけだ。ちなみにボディパネルは、アルミのXKとは異なり、スチールがメインとなっている。

また、平均年齢34歳という若いチームによって開発されたインテリアは整然とデザインされ、吟味されたウッドやアルミニウムのトリム、ステッチが美しいグレインレザーなど、英国車の伝統と現代的な価値が融合して、ユニークな世界感を演出することに成功している。

エンジンスタートボタンが心臓の鼓動のように明滅し、スイッチオンで円筒状のドライブコントロール(シフトレバーの代わり)がせり出す。と同時に、エアコン吹き出し口が反転してルーバーが現れる。エンジンがかかるまでのそんな演出もまた、人とクルマのより密接な関係を築く新たな手法と言えそうだ。

個人的には明滅するボタンとともに何か新しい生き物の心臓音のようなものが聞こるぐらいに過剰な演出を施しても面白いと思った。キャブ時代にあった「儀式」をもう一度というわけで、時代に逆行する要素もまた、プレミアム装備になりうる。

そのほか、無粋なレバーやスイッチ類を極力廃するため、タッチセンサー式のボタン(触れるだけでグローブボックスが開閉する)や、モニター上でのタッチパネルを積極的に取り入れるなど、極めてモダンなインターフェイスを採用しているのも特徴である。

画像: ひと目でジャガーと識別できるリアビューとワイド&ローのプロポーション。新世代ジャガーにエールを送りたい。

ひと目でジャガーと識別できるリアビューとワイド&ローのプロポーション。新世代ジャガーにエールを送りたい。

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