2008年、BMW1シリーズは5ドアハッチバックに、2ドアクーペ、カブリオレをラインアップに加え、充実したバリエーションを持つモデルとなっていた。エンジンは直列4気筒1.6Lと2L、直列6気筒3Lと3L直噴ツインターボの4種類、トランスミッションも6速ATと6速MTを揃えていた。BMWが1シリーズをいかに重要なモデルと位置づけていたかうかがえるが、それぞれのモデルにどのような持ち味があったのか。個々の性格と魅力を検証している。(以下の試乗記は、Motor Magazine2008年6月号より)

豊潤な力感を求めるなら130iか135iクーペ

次に130i Mスポーツに話をそう。最大トルクで比べてみると116iの150Nm、120iの200Nm、そして130iは315Nmで、なんと116iの2倍以上の力を発揮する。これでもわかるように、130iのパワーとトルクは通常の使い方ではいわば過剰なものである。それを使い切れないことがわかっていても、その余裕を欲しがる人はたくさんいる。

走行中にアクセルペダルを踏み込んだときに、そのストロークが小さくても十分な加速力を感じられると嬉しいからだ。またこれは、決してアクセルペダルの踏み始めだけレスポンスをシャープにしているわけではない。ちょっと踏んだときでもグイッという加速力があるが、もっと深く踏み込んでいくと最初の反応に比例した鋭い加速が出る。これは反応がリニアだということで、アクセルペダルの踏み始めだけの瞬間芸ではないのだ。

エンジンのシリンダーブロックやヘッドカバーなどをマグネシウム合金で作った直列6気筒は、普通のV6エンジンより軽いのもメリットだ。バルブトロニックシステムの採用や、電動ウォーターポンプ採用でフリクションロスを小さくするなどの先進技術が注ぎ込まれている。

BMWの社内でも、この「N52B30A」と呼ばれる直列6気筒NAエンジンが好きだというファンが多い。それはターボエンジンに対して、アクセルペダルの反応がとても自然だからだ。またアクセルペダルを踏み込んでいったときにタイムラグはなく、その音の変化も楽しめる。吸気音がよく聞こえるし、排気音もタコメーターが要らないくらいエンジン回転数がわかる正確なサウンドを聞かせてくれるからだ。

6気筒モデルになると、タコメーターの目盛りの周囲にスリットが設けられていて、タコメーターのゼブラゾーンが下がってきて、始動直後や冬期などにはエンジンがまだ暖まっていないことを示す。つまり、エンジンの許容回転数はここまで、と知らせているのだ。冬真っ盛りの関東地方だと、ゼブラゾーンは4500rpmくらいにまで下がる。だがこの下がったゼブラゾーンまでの範囲でも、ごく普通に運転できる。つまり、通常の走りでは4500rpmまではいかない。だからエンジンが冷えていても通常通りに走れるということだ。

135iクーペの6速MTは、AT免許ではないドライバーなら誰にでも乗れるクルマだ。それはあまりにもエンジンに力があり、クラッチペダルの操作もしやすいからだ。クラッチペダルの操作はリアルタイムで動いてくれないとなかなか難しくなるが、135Iクーペのクラッチペダルはリニアな動きで扱いやすいのだ。ちなみに6速ATモデルは、やや遅れての登場となっている。

それに、ターボなのにターボらしさは微塵も感じられないエンジンに仕上がり、純粋に大排気量のNAの感じで運転できるところがいい。2002tiiの再来といわれているが、それはボディデザインだけでなく、インパクトのある速さを持っているからだろう。

この135iクーペは、クーペのボディ形状を持ちながらも、居住性も満足できるレベルだ。後席に2人が乗れ、ボクのように胴が長くてもヘッドクリアランスもレッグスペースもしっかりある。

画像: 130i MスポーツはコンパクトなCセグメント5ドアハッチバックボディに、3L直列6気筒エンジンを搭載したスペシャルなモデル。

130i MスポーツはコンパクトなCセグメント5ドアハッチバックボディに、3L直列6気筒エンジンを搭載したスペシャルなモデル。

画像: 1シリーズのクーぺモデルとして登場した135iクーペ Mスポーツ。直列6気筒ツインターボを搭載。

1シリーズのクーぺモデルとして登場した135iクーペ Mスポーツ。直列6気筒ツインターボを搭載。

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