2008年、プジョーモデルとして初めて8世代目に突入した308が日本に上陸した。従来のCセグメントの枠を超えたボディサイズ、マッシブなデザイン、高い質感が注目を集めたが、その実力はどんなものだったのだろうか。Motor Magazine誌では弟分の207シエロとともに、308シエロのロングツーリングテストを行っているので、その模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年7月号より)

走りの質感も上々、静粛性も高い

そんな308と、弟分たる207を連ねて往復700kmのツーリングに出かけてみた。市街路あり、郊外路あり、高速あり、ワインディングあり、という行程で、日本上陸間もない308の実力と直下に位置する兄弟モデルとのテイストの違いを探ってみようという算段だ。

右ハンドル仕様で導入される日本の308シリーズ。そのドライビングポジションに違和感はない。かつては明らかに「右ハンドル市場はおざなりにされている」感が強く、時に足先がステアリングシャフトと干渉するような事態すら発生したプジョー車だが、もはやそんな心配事をしなくても済むのは、これもまた総合的なクオリティがアップしたことの一環と評価して良いだろう。

走り始めると、ひと昔前までのピンシャンとしたプジョー車の走り味とは異なることがわかる。とことん正確なステアリングの応答性や、追い込み舵に対するアンダーステアの弱さは今でも特筆レベルにあるが、極端と言えるまでの若作りな走りのテイストは、すっかり影を潜めている。

そんな随分と「大人びた走り」となったことを実感させる理由は、静粛性の高さにもある。相対的にはロードノイズが目立つものの、このクルマのクルージング時の静粛性の高さは、数あるハッチバックモデルの中でも、今やトップクラスにランクできるものと言ってよい。

ただし、そんな静粛性に対する好印象が高速道路を下りるとともに減じられたのは、相変わらず低速ギアを引っ張り気味とする傾向の強いプログラミングの4速ATの影響が大きい。

高速時には低いエンジン回転数のままアクセルONでしっかりとした加速トルクを発揮してくれる1.6Lのターボ付き直噴エンジンも、ひとたび市街地となるとこうして低いギアで高いエンジン回転数を選択しがちとなるトランスミッションのせいで、どうもせっかくの低回転トルクの強さを生かしきれない。

また、アクセル操作に対するトルクの現れ方の変化もやはり自然吸気エンジンに比べると全般に大きく、時に吸い込まれるような加速感を覚えるのも一度気になり始めると結構気になるポイントだ。

4速ATのプログラミングとアクセルゲインの変化の大きさという2つは、この先リファインを加えていってもらいたい部分。とくに、燃費面や商品性という点からも、この期に及んでATが4速という点は、やはり問題ナシとはいかないだろう。

フットワークのテイストは決して「ソフト」とは表現できないものの、今回同行の207シエロも含め、全般に「突っ張り気味」な印象が強かった最近のプジョー車としては、久しぶりに「ねこ脚」というフレーズも使う気持ちになれるものだった。

実は快適性に関しては、16インチのシューズを履く「プレミアム」グレードが、よりしなやか感に富んだ味わいの持ち主であることはすでに確認済み。「シエロ」ではわずかに気になるドラミングが、「プレミアム」グレードではスッキリ消えてなくなることも付け加えておきたい。

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