【10年ひと昔の国産車 38】レクサス IS Fは成熟した作り込みで自由自在の走りが楽しめた

だが今回はステアリング操作に対して、小さな入力からサスペンションが動いてくれるから力が蓄えられず、分散することで同じ安定感を保ちつつ、硬さを逃がしてくれている。

したがって、ジワッとロールが始まってくれることでハンドリング的にも正確さが増している。5LのV8 DOHCという大きなエンジンを積んでいることで前輪への負担は大きいはずなのに、力を初期からしっかりと受け止めている。そのため、操舵とロールのフィールが近くて、旋回中のライントレース性がぐんとアップしている。

加えて、今回から採用されたトルセンLSDは左右の回転差を規制せずに駆動力を与えることから、旋回中にアクセルをガンガン踏んでいってもクラッチタイプのような押し出され感が極めて少ない。

比較的ハイスピードのワインディングでレコードラインにスッと乗せた後、アクセルをガツンと踏み込んでいってもリアが旋回フォームを崩すことなく、ラインに乗っていってくれる。従来のような駆動力の抜けも、フロントの急な沈み込みもなく、滑らかな高速コーナリングを容易に楽しめるようになった。

街中での扱いやすさとワインディングでの気持ちよさ。新しいIS Fは、このふたつの魅力を兼ね備えてくれた。これからも、その走りの世界をしっかりと磨いていってくれることに期待したい。

■レクサス IS F 主要諸元

●全長×全幅×全高：4660×1815×1415mm
●ホイールベース：2730mm
●車両重量：1690kg
●エンジン種類：V8 DOHC
●排気量：4968cc
●最高出力：311kW＜423ps＞／6600rpm
●最大トルク：505Nm＜51.5kgm＞／5200rpm
●トランスミッション：8速AT
●駆動方式：FR
●10・15モード燃費：8.2km／L
●タイヤ：前225／40R19、後255／35R19
●当時の車両価格＜税込み＞：780万円

レクサス IS F8

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