2008年、新型ゴルフⅥ登場の噂が聞こえ始める中、欧州でアウディA3/A3スポーツバックがフェイスリフトを受けた。エンジンラインアップの一新、トランスミッションの多様化など、アウディの自信が見え隠れする大幅な変更だった。Motor Magazine誌はドイツ・ミュンヘン郊外で開催された国際試乗会に参加、ここではその模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年8月号より)

4年連続で販売記録更新、世界的に販売好調のA3

アウディのニューモデル攻勢がとどまるところを知らない。

ここ直近でもR8やA5、さらにはQ5といったブランニューモデルがリリースされ、A4やTTシリーズのフルモデルチェンジといった大きなニュースも続々伝えられている。さらに、追加モデルや細かなリファインといったニュースも加えれば、もはや「アウディの新車ネタ」だけでも毎月相当の数になりそう。そしてそれらすべてが、このブランドが世界に冠たるプレミアムメーカーへと現在でも継続的な成長を目指していることを、端的に象徴するものと言っていいだろう。

一方で、このメーカーのそうした華やかなニュースを基盤として支えるのが、ラインアップの中で最もベーシックなモデルであるA3をはじめとした「量販車種」であるのもまた事実。というわけで、2003年の発表後すでに5年という時間が経過した現行A3に強力なカンフル剤が打たれることになったというのも、また見逃せないニュースであるわけだ。

デビュー後、相当の時間が経ちながらも、この期に及んでフルモデルチェンジではなく「ビッグマイナーチェンジ」が施された理由は、端的に言えば「現行A3というモデルが、今になっても好調なセールスを継続しているため」ということであるようだ。

昨2007年のA3の生産台数は23万台余り。これは、実は「4年連続での新記録」という。すなわち、A3の世界の市場でのセールスのテンポは、新車効果が薄れて落ちるどころか、むしろ昨今になってもまだ上向いているのだ。そんな今のタイミングで、新鮮さをアピールするためのモデルチェンジを行う必要というのは、確かに考えにくいだろう。

そんな「最新のA3シリーズ」は、まず顔付きが新しい。ヘッドライトユニットの淵に沿ってレイアウトされたLEDライトが個性的な輪郭を描くのは、最近のアウディ各車のお家芸。もちろん、新しいA3にもそうしたテクニックが採用されるものの、それはA4やA5、あるいはR8のようなアイシャドータイプではなく、ライトユニットの内側から上部にかけて光のラインが流れるウイングタイプであるのが特徴だ。

遠目にもアウディ車であることが一目瞭然という、そんなブランドアイデンティティを強くアピールするのに一役買った「シングルフレームグリル」を採用するのももちろんのこと。さらに、グリル両脇から立ち上がってフードへと続くV字型のラインは従来型以上に強調。すなわち、フェンダーの造形変更も含め、フロントまわりの外装パーツは一新されているわけだ。

リアビューではまず、マイナーチェンジでの常套手段であるコンビネーションランプのデザイン変更が行われ、とくに発光時に新鮮さをアピール。一方、サイドビューには大きな変化が感じられないのは、基本骨格をキャリーオーバーとするマイナーチェンジでは致し方のない事柄だろう。

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