パワーパックの刷新で商品力を大幅にアップ
ドイツはミュンヘン郊外で開催された国際試乗会では、1.4TFSIと2.0TFSIクワトロの2タイプのモデルを、それぞれ7速と6速仕様のSトロニックとの組み合わせでチェックすることができたので、その報告をしていこう。
すでに同種のパワーパックをゴルフでも体験済みだが、1.4TFSIエンジン+7速Sトロニックの組み合わせがもたらす大きな美点はまず、微低速時のドライバビリティが極めて優れている点にある。走り出しのクラッチワークの滑らかさ、変速のスムーズさはこれまでの6速Sトロニックのそれを凌ぐレベルで、トルコンAT車と直接比較しても何ら遜色なし。それと同時に、まさに走り出しの瞬間からシームレスに立ち上がるターボブーストの威力で、低速域での加速感が何とも力強い。
一方、5500rpm付近から上でのエンジン回転の伸びには明確な頭打ちが感じられはするものの、それでもトップスピードはオーバー200km/hに達するから、特に急ぐ旅でなければアウトバーン上でも何らの不満なしだ。
そんな1.4Lモデルから乗り換えれば、150kg以上の重量ハンディを軽々跳ね除けて、強力そのものの動力性能を味わわせてくれたのが2Lモデル。排気量の違いから低回転域での力強さももちろん上乗せされる一方、3000rpm付近からのトルクの盛り上がり方にはターボエンジンらしいメリハリ感がより明確に存在する。
その他、日本には導入とならないMT仕様車など数台も含めて感じたA3の印象は、「全般にそのフットワークのテイストが引き締まっていること」だろうか。
ガソリンエンジン搭載車では「最高出力が160ps以上」という基準で、ダンパーの作動フルード内に磁性体を混ぜて磁力によりコントロールすることで減衰力を可変とするマグネティックライドが設定され、実際に2Lのクワトロモデルにはそれが装着されていた。
一方、前述の基準に外れる1.4Lモデルにはそもそもマグネティックライドの設定はなし。その影響もあってか特に低速時などでは、路面凹凸に対して2Lモデル以上に脚が突っ張るような感触があった。
おそらくは、このあたりが次期型の開発にあたっての大きな課題となる部分であるはず。今回のテスト車が、標準サイズ+1インチの17インチタイヤを履いていたことなどの影響もあろうが、これまでのコンパクトハッチバックの概念を覆すほどの静粛性を備えた1.4Lモデルでは、それがとても残念に思えた部分だった。
いずれにしても、パワーパックの刷新を中心とした今回のリファインによって、その商品力を再度大幅にアップさせた最新のA3。その仕上がり具合は、再びライバル各車たちを悩ますことになりそうだ。(文:河村康彦/Motor Magazine 2008年8月号より)
アウディA3スポーツバック 2.0TFSIクワトロ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4292×1765×1423mm
●ホイールベース:2578mm
●車両重量:1455kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1984cc
●最高出力:200ps/5100-6000rpm
●最大トルク:280Nm/1700-5000rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:6速DCT(Sトロニック)
●最高速:236km/h
●0→100km/h加速:6.7
※欧州仕様
アウディA3スポーツバック 1.8TFSI 主要諸元
●全長×全幅×全高:4292×1765×1423mm
●ホイールベース:2578mm
●車両重量:1335kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1798cc
●最高出力:160ps/5000-6200rpm
●最大トルク:250Nm/1500-4200rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:7速DCT(Sトロニック)
●最高速:222km/h
●0→100km/h加速:7.7※欧州仕様
アウディA3スポーツバック 1.4TFSI 主要諸元
●全長×全幅×全高:4292×1765×1423mm
●ホイールベース:2578mm
●車両重量:1310kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1390cc
●最高出力:125ps/5000rpm
●最大トルク:250Nm/1500-4000rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:7速DCT(Sトロニック)
●最高速:203km/h
●0→100km/h加速:9.5
※欧州仕様