2008年、アルファロメオからコンパクトモデル「MiTo」が登場し、日本でも話題となった。全長わずか4mという147よりも小さなコンパクトカーだが、8Cコンペティツィオーネをイメージさせるプレミアム性があった。Motor Magazine誌はイタリアで行われた国際試乗会に参加、ここではその時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年9月号より)

8Cと同様にアルファロッソのボディカラーがよく似合う

実車を目の前にすると興奮はさらに高まる。4mをわずかに超える全長で幅は1720mmあるので、全体に安定感があるフォルムだ。そうでありながら、フロントグリルとヘッドライトのあたりは8Cのイメージそのままで実にスタイリッシュ、無理にコンパクトにまとめたという感じがしない。

ボディサイドはボリューム感において8Cとは明らかに異なるが、リアエンドはまた丸型テールライトやバンパー形状がうまくまとまっていて、いい雰囲気を出している。アルファロッソのボディカラーがよく似合うのもミトと8Cの共通点だ。

それにしてもなぜ、これほどまでに似たスタイリングを実現することができたのか。その場では考え込むばかりで正解は見つからなかったのだが、日本へ帰ってきて8Cのスペックシートを見ていたら、あることに気が付いた。

実は8Cの全長はもともとそれほど長くないのだ。欧州仕様のデータで4380mm、ミトは4063mmだからその差は317mm。プロポーションという観点から見ると、全幅の違いの方が大きい。8Cが1895mmに対してミトは1720mmなので、差は175mmにもなる。そのためボディサイドのデザインが、もっとも8Cに近づけなかった。

いよいよコクピットに乗り込む。ステアリングホイールやメーターまわりのデザインは8Cとよく似ている。147や159よりも明らかに洗練されており、このテイストは今後、他のモデルへも活かされていくのだと思う。またインパネまわりにはカーボンファイバー調の素材が使われている。本物を随所にあしらっている8Cとは比べるべくもないが、一歩でも近づきたいというミトの気持ちが伝わってくるようで、何とも微笑ましく感じる。

ステアリングホイールにはチルト&テレスコピック調整機能がある。運転席にはシートリフターが付き、前後スライドの調整幅は大きい。また、シート自体は大型で厚みがあり、座り心地がいい。これなら長距離ドライブでも疲れは少ないだろう。よりよいドライビングのために必要な装備にぬかりはないようだ。

リアシートは背面が立ち気味で、前後方向の余裕はあまりないが、30分くらいのドライブなら大人4人乗車でも不満は出ないだろう。ただ5人は厳しい。横方向に余裕がないからだ。仮にミートをファーストカーにしたいファミリーに、スペースのことを訊かれたら、「子供がふたりで小学生ならばなんら問題ないでしょう」と答える。

ラゲッジルームは奥に深い。床下にはテンパータイヤを収納している。ハッチゲートを開くと剛性が高く後突に強そうな構造であることがわかるが、大きな荷物、重い荷物の出し入れは大変かも知れない。容量は270Lだ。参考までにアルファ147は280L、ゴルフは350Lだから意外に広いと言えそうだ。

試乗車は本革シートが装着されていたこともあるが、インテリアは全般にゴージャスで質感も高かった。希にスタイリングは非常にいいのだがインテリアが貧相なクルマがある。しかし、ミトは違う。内外装ともにバランスよくプレミアムに仕上がっている。

画像: 「MiTo」とはアルファロメオゆかりの地、ミラノとトリノの頭文字を組み合わせたもの。「ミラノでデザインされ、トリノで生産される」ことを示しているという。

「MiTo」とはアルファロメオゆかりの地、ミラノとトリノの頭文字を組み合わせたもの。「ミラノでデザインされ、トリノで生産される」ことを示しているという。

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