2008年、2代目アウディRS6アバントが5L V10 FSIツインターボエンジンをひっさげて日本にやってきた。直噴+過給器という組み合わせはエンジンの主流になりつつあったが、とくにこのV10ユニットはその象徴とも言うべき存在だった。Motor Magazineではドイツ車特集の中で、このRS6アバントの試乗とともに、その後登場が予定されていたTTSクーぺ、A4アバント、S3スポーツバックの魅力について考察している。今回はその興味深いレポートを探ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年9月号より)

技術による先進によって生み出されるモデル

さて、「技術による先進」はこのRS6アバントだけでなく、TTのバリエーションに加わったTTSにも盛り込まれている。

エンジンはRS6アバントと同じようにターボとFSIの組み合わせである。2L直列4気筒エンジンから272ps/6000rpmと350Nm/2500−5000rpmのパワーとトルクを発揮する。ベースエンジンのインテーク、エキゾーストの内径を広げている。さらにターボのタービンをIHI製からボルグワーナー社製に変え、タービン径も大きくなった。シリンダーヘッドブロックに使用されるアルミ合金の材質も強度の高いものに変更される。TTのラインアップで最強のパワーを持つモデルだ。

これだけのパワーは2輪駆動では受けとめられないため、TTSはクワトロが標準となる。横置きエンジンだから、メイン駆動は前輪となるが、必要に応じて素早く後輪も駆動する。つまりアクセルペダルを踏み込んで前輪がホイールスピンするときにはもう後輪に駆動力が伝わっている。このクワトロの助けもあって0→100km/hを5.2秒で走り抜ける実力を持つ。

個人的には、TTSはあえてターボラグを感じさせるようにした気がしている。あとから引っ張られるような加速感はターボ独自のものだが、それを楽しむ遊び心を持っていると感じるのだ。ただし、通常走行に必要な低速トルクは十分にあるから、この時はターボラグはまったく感じずに走ることができる。トルクが盛り上がるところだけ、ターボラグがある感じだ。またパドルシフトでシフトダウンした時や、ATのSモードで走行するときにはエンジン回転数が高くなるので、この時もターボラグは気にならなくなる。

また、TTSには専用サスペンションが組み込まれている。車高は10mm下げられ、重心位置が下がっただけでなく見た目の迫力も出ている。これにアウディマグネティックライドが組み込まれている。瞬時に減衰力を切り替えることができるこの機構は、走行状況によりこれを変化させ、乗り心地とハンドリングを高いレベルで両立させている。しなやかで乗員の揺れが少なく、ダンピングも良いので快適だ。さらにコーナリング時のロールは小さくふらつき感もない。アウディマグネティックライドの熟成はかなり進んだようだ。

クラッチを2つ持つ、DCTのSトロニックも進歩している。変速時間がこれまでより短くなり、スムーズでダイレクトな感触になった。

日本に導入されるかどうかは未定だが、TTのディーゼルモデルも魅力的と言える。インゴルシュタット周辺で6速MT車に試乗したが、1750−2500rpmで350Nmという強大なトルクを発揮するエンジンは、スポーティな走りも得意とする。ちなみに0→100km/hは7.5秒である。静かでスポーティなディーゼルエンジンは、導入されればきっと日本でも多くのファンを獲得できると思う。

さらに期待のモデルとして、7月29日に日本でも発表されたA4アバントがある。もちろんA4セダンをベースにしているから、フロントアクスルが前進して前輪が働きやすい環境を創り出しているのも同じだ。A4に搭載されるクワトロは、イニシャル時40対60という前後トルク配分となる。必要に応じて前輪が最大65%、後輪が最大85%にまでトルク配分を変えられるセルフロッキング式のデバイスを持つ。

アバントの場合はラゲッジルームの荷物によって後輪荷重が増えることも考えられるが、このクワトロシステムなら柔軟に対応できるから、スムーズなドライビングが可能だ。

A3とA3のスポーツバックも、最近欧州でフェイスリフトされたから、近々日本に2009年モデルとして導入されるはず。豊富なエンジンラインアップの中でも注目は1.4TFSIだろう。ゴルフTSIトレンドラインに搭載されるものと基本的に同じエンジンながら、3psアップの125psを発揮する。これには7速のSトロニックが組み合わされる。その他160psを発揮する1.8TFSI、200psの2.0TFSIがラインアップ、1.8TFSIには1.4TFSIと同じく、7速Sトロニックが組み合わされる。2.0TFSIはクワトロ専用となり、こちらのトランスミッションは6速Sトロニックとなる。また、日本に導入される可能性は少ないが、1.9TDI、2種類のチューニングを持つ2.0TDIエンジンが本国では用意されている。

さらに、25mm車高が低くなるスポーツサスペンションを備えた本格的なアスリートであるS3にもスポーツバックが設定された。これにより、いよいよ日本にもS3スポーツバックが導入されるかもしれない。搭載されるのは、強化された2.0TFSIエンジンで265psを発揮する。現状では6速MTしか設定がないが、Sトロニックも今後設定を予定している。

A3スポーツバックは、全車でデュアルクラッチのSトロニックを選ぶことができ、トルコンATは姿を消し、アウディマグネティックライドも選べるようになるなど、プレミアムコンパクトのセグメントでもアウディらしい技術をアピールしている。「技術による先進」はこれからも持続しそうだ。(文:こもだきよし/写真:永元秀和)

アウディ RS6 アバント 主要諸元

●全長×全幅×全高:4930×1890×1475mm
●ホイールベース:2845mm
●車両重量:2160kg
●エンジン:V10 DOHCツインターボ
●排気量:4991cc
●最高出力:580ps/6250-6700rpm
●最大トルク:650Nm/1500-6250rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:1660万円(2008年)

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