2008年、世界的にマイクロコンパクトカーが注目を集める中、3月のジュネーブオートサロンでトヨタからiQ(アイキュー)がデビューして話題となった。そして、10月には日本でも正式発表となるが、その前に北海道・士別のテストコースで日本仕様のプロトタイプ試乗会も行われている。正式発表直前のプロトタイプはどんな評価を受けていたのか、どんな魅力があったのか。ここではその士別のテストコースでの試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年10月号より)

最小回転半径は3.9mと軽自動車より小回りが利く

さて、士別試験場で試乗したiQプロトタイプの印象をお伝えする。

まずスタイリングだが、全長は3mを切る2985mmと軽自動車より410mmほど短いが、全幅はヴィッツと同レベルの1680mmもある。実際、正面から見るとそれなりに大きい。その造形からしてヴィッツより「立派」に見えるほどだ。

この全長と全幅の比率がiQの大きな特徴といえる。極力オーバーハングを短くし、タイヤは四隅に配置されている。そのため、構造的にはデフをエンジンより前方に置くなどの方策がとられている。

短いながらも幅があることで、キャビンはそれなりに広い。助手席の前、通常グローブボックスがあるあたりがえぐれているので、かなり前へシートをスライドさせることができる。すると左のリアシートは足元に余裕ができ、身長180cmくらいの人でも問題なく座ることができる。運転席の後も小学校低学年の子供なら十分に座れる。

乗車定員が4名であることは、2名のsmartに対する大きなアドバンテージだ。ただ、smartは、iQよりさらにひと回り小さい。イメージとしてこの2車は似ているが、クラスは違うと考えた方がよいだろう。

iQが凄いのは、そのsmartよりも最小回転半径が小さいところだ。smartが4.2mであるのに対し、iQは3.9mなのだ。この30cmの差は大きい。車庫入れなどを想定した特設コースでiQの取り回しの良さを試したが、それは驚くべきものだった。

感覚的には曲がるというより、その場で回転しているようだった。軽自動車でも最小回転半径は4mを越えるので、iQは幅があるが、現代のクルマが未踏の路地へ入ることができるかも知れない。

インパネまわりのデザインはかなり個性的だ。シルバー塗装のセンタークラスターは、海中を舞うマンタ(エイの一種)をイメージしたものだという。他の部分も貝殻や波など、自然界の造形をモチーフにしてデザインされている。また、メーターパネル付近は滑らかな曲線で構成された左右非対称の造形だ。スイッチ類は、ひとつに多くの機能を集約するという考え方で構成されている。

キャビンのパッケージングも斬新だが、インパネまわりのデザインも負けていない。よく思い切ったものだ。

安全装備ではSRSエアバッグに数々の工夫が凝らされている。運転席にはニーエアバッグが装着されているが、助手席にはシートクッションエアバッグが付いている。助手席は前ギリギリにスライドされているという前提で、シート座面の前部を持ち上げることによって、身体が前方へ移動するのを防ごうというものだ。サイドエアバッグは大型で、また後突への対応として、リアウインドウカーテンシールドエアバッグが装備されている。これらはもちろん、全車標準装備となる。

画像: センタークラスターはマンタ(エイの一種)をイメージした造形だという。全般にユニークなデザインのインパネ回り。

センタークラスターはマンタ(エイの一種)をイメージした造形だという。全般にユニークなデザインのインパネ回り。

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