2008年、世界的にマイクロコンパクトカーが注目を集める中、3月のジュネーブオートサロンでトヨタからiQ(アイキュー)がデビューして話題となった。そして、10月には日本でも正式発表となるが、その前に北海道・士別のテストコースで日本仕様のプロトタイプ試乗会も行われている。正式発表直前のプロトタイプはどんな評価を受けていたのか、どんな魅力があったのか。ここではその士別のテストコースでの試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年10月号より)

ホイールベースの短さを感じさせない確かな走り

エンジンは1Lガソリンと1.4Lディーゼルターボの2種がある。日本へは1Lガソリン+CVTが導入されるが、欧州にはこれに加えて1Lガソリン+5速MTと1.4Lディーゼルターボ+6速MTが用意される。

試乗したのは日本導入予定の仕様。ハンドルを握って前方を見ると、当たり前だが前しか見えないので、特別に全長の短いクルマに乗っている気がしない。5ナンバーサイズのクルマと同じように横幅があり安心感がある。

走り出しても、そうした印象に変化はない。まっすぐはよくても、コーナリングではホイールベースの短さを感じるだろうと思っていたが、そんなこともない。ごくごくふつうによく走るのだ。リアタイヤの接地感も十分だ。

低中速域はいいが高速域での直進安定性はどうかと思い、テストコースの直線部分で120km/hほどまでスピードを上げたが、それでも何ら不満はなかった。試乗後、実験部のエンジニアに聞いたのだが、比較する同クラスのクルマがなかったので、ベンチマークにはヴィッツを使ったとのこと。そして、様々な部分でヴィッツを上回ることができたという。実感どおりの話だった。

もちろん、気になるところもある。伝達効率優先でコンパクトカーにはCVTが採用されることが多い。日本仕様のiQもそうなのだが、これが本来持つこのクルマの良さをスポイルしている面があると思うのだ。

今回の試乗は発表前のプロトタイプということで、スペックも明らかになっていないのだが、消息筋によると欧州で販売される1.4Lディーゼルターボは、最大トルクが1Lガソリンの2倍以上あり、日本仕様と違うセッティングの足まわりと6速MTとの組み合わせで、かなり活発に走るとのことだ。また、アウトバーンを150km/hで楽々と巡航できるとも聞く。確かに1Lガソリン仕様車に乗っても、そうした片鱗は感じられる。ならば片鱗ではなく日本でもそれを味わいたいと思うのは自然だろう。

ユーロ5には対応できても、日本へ導入するとなれば、さらに高いハードルであるポスト新長期の排出ガス規制に対応しなくてはならない。課題はあるが、そもそもiQ日本導入の意義は「小さくてもプレミアムなものが受け入れられるかどうかの検証」にあるということだ。ならば今回は大いなるチャンスだと思う。

さて、iQは10月初めに開幕するパリオートサロンで欧州デビューとなり、その後、日本で発表されることになる。中嶋チーフエンジニアによれば「iQは初めから手の内を全部出すのではなく、徐々に出します」とのこと。おそらく1.3Lの新しいガソリンエンジンとMTの組み合わせも用意しているだろう。また、新たな仕様を追加するだけでなく、売り方にも様々な趣向を凝らしていくようだ。この「新しい乗り物」の販売動向には大いに注目していきたい。(文:Motor Magazine編集部 荒川雅之)

画像: 1Lガソリンエンジンに組合わされるCVT。日本仕様は当面これのみ。

1Lガソリンエンジンに組合わされるCVT。日本仕様は当面これのみ。

トヨタiQ プロトタイプ 主要諸元

●全長×全幅×全高:2985×1680×1500mm
●ホイールベース:2000mm
●トレッド前:1475mm
●トレッド後:1460mm
●最小回転半径:3.9m
●室内長:1560mm
●室内幅:1515mm
●室内高:1145mm
●乗車定員:4名

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