iQ誕生の背景にコンパクトカーの価値拡大の狙い
実にいいタイミングで出てくるものだと感心させられる。早ければいいというものではないし、遅くては話にならない。ちょうどいい今この時期に登場したトヨタiQは、いやでも世間の注目を集める。もちろんそれは「歓迎ムードで」ということになるが、ある一面では厳しい評価を受けるかも知れない。
それは早い話が「売れるか、売れないか」ということだ。本当に今の時代にぴったり嵌っている商品ならば、よく売れるはずだ。ふだんはクルマそのものについての興味が先行して、「売れる、売れない」については関心が持ちにくいのだが、このiQについてはこれが凄く気になる。日本のクルマ市場の一端が、その結果で見えてくると思うからだ。
しかし、トヨタはそんなことは気にしていないようだ。ふだんは人一倍「売れるか、売れないか」にこだわるメーカーなのに、このiQに限ってはそういうレベルでは見ていないようなのだ。iQを手がけた中嶋裕樹チーフエンジニアは言う。「たくさんのコンパクトカーがありますが、それは形が違うだけです。iQではコンパクトカーの価値軸を広げたいのです」と。販売成績にこだわるのではなく、「小さくてもプレミアムなものが受け入れられるかどうか、国内で検証していきたい」と言う。
そもそもiQ誕生の背景には欧州市場の事情がある。2012年から義務化されるCO2総量規制への対応策という側面だ。どうしても燃費のよい魅力的なモデルが必要なのだ。実際、iQは年産10万台体制で立ち上がるが、その7割は欧州向け、3割が日本向けと予定されている。北米をはじめ他の地域では販売されない。欧州が「主」で日本は「従」となる。
というわけで、日本では「検証する」という位置づけでよいのだ。と言うか、検証することに大いなる価値を見出しているということだ。