走りっぷりにも、2台の個性の違いを感じる
コンパクトとはいえ、BEVらしい発進からタップリとしたトルクで加速し、しかも静かに車速が伸びていく走りっぷりは、2台とも今までに登場してきたBEVと基本的には変わらない。それでも、それぞれの個性の違いは感じさせてくれる。
まず、ホンダ eはRWDらしい、後ろからパワーをかけて押されている感覚がよく分かる。とくにFWDではアンダーステア気味になる、少し舵角のあるコーナリングではニュートラルステアに近い感覚でコーナーをクリアする。バッテリーを床下に敷き詰めて低重心化しているから、コーナリングが楽しい。しかも、RWDのおかげで前輪の切れ角が大きく、最小回転半径は4.3mと軽自動車より小さいくらい。車庫入れや街中での取り回しは、かなり楽だ。
走行モードは「ノーマル」で走っても不満はない。「スポーツ」は、ここぞというときだけで十分だろう。シングルペダルコントロールのスイッチも備え、停止までブレーキを踏まない、いわゆるワンペダル走行も可能だ。
プジョー e-208は、エンジンとモーターのフィールの違いはあるが、乗り味はエンジン車から乗り換えても違和感のないものだ。FWDらしい弱アンダーステアのコーナリング特性は変わらないし(それでもバッテリーによる低重心化の恩恵はある)、プジョーの小型車らしくキビキビした走りを見せてくれる。
走行モードは、街中なら「エコ」で十分。「ノーマル」だと加速が良くなり、「スポーツ」はサーキットかワインディング用?と思えるほど。セレクターをBレンジに入れればアクセルOFF時に減速度が増すが、ワンペダル走行で完全停止状態まではできない。このあたりは、エンジン車にフィーリングを近づけているのだろう。
両車の大きな違いは、ホンダ eはデイリーユースの都市型コミューターを目指しているのに対し、e-208はエンジン車並みの活動範囲を考えたバッテリー容量の差にある。したがって、両車とも室内スペースは広く快適だが、ラゲッジスペースはホンダ eが171Lとさほど広くないのに対し、e-208はエンジン車と同じ265Lを確保している。
サイズ的にも価格的にも近い両車だが、最終的な選択基準は「どう使うか?」にあるだろう。最近は各地に充電設備が増えているからホンダ eでも遠出は可能だが、急速充電は車種によっては使えなかったり、バッテリーの寿命にも影響する。
BEVを愛車として(とくにコレ1台だけで)暮らしたいのなら、どのようなカーライフを送りたいのか、それが実生活とマッチしているのか、よく考えて最適の1台を選びたいもの。そうすれば、BEVでも理想的な愛車生活を送ることができるだろう。(文:Webモーターマガジン編集部 篠原政明/写真:井上雅行)