自家発電所を持った電気自動車
初代ミライはデザインの奇抜さに度肝を抜かれたが、2代目はまずはその静かさにこちらの毒気を抜かれてしまった。
燃料電池車(FCEV)=水素で走るクルマというと、水素を燃やして走っていると勘違いされることが多いのだが、これは水素と大気中の酸素を化学反応させて電気を作り出しモーターで駆動する、つまり自家発電所を持った電気自動車である。
システムが複雑なので、たとえばBEVよりはさまざまな音がしそうなものだが、これほど静かなクルマってある? と思わずつぶやきたくなるくらいの静粛性の高さに、まず驚かされてしまった。
とりあえずエコモードで走り出してみたが、パワー的にはこれで十分。エネルギーフローを見ていると、発進時は発電した電力で動き出し、その後はバッテリーに蓄電した分を加えていく感じだが、とにかくダイレクト。ハンドルを切ってみても、さまざまなものを守るためにボディがガッチリしているので、操舵に対してスッと動きがついてきて気持ちイイ。
でも実は大人しいだけじゃない。アクティブサウンドコントロールをオンにして、スポーツモードに切り替えると、ちょっとやりすぎ!? というくらいの大きめサウンドで、気持ちもパワーも盛り上げてくれる。この時のステアフィールがもう少し自然だとなお良し。だが、まずは乗り物として楽しませようという姿勢は賞賛したい。
同時に燃料電池車(FCEV)の仕組みを生かし、PM2.5も捕まえるフィルターを通して空気を吐き出すことで、大気をよりキレイにするマイナスエミッションなる取り組みや、9kW/hの大容量電力を取り出せるなど、乗っている人以外のためにも役立つ仕組みもユニーク。これでインフラが整えば、いよいよ燃料電池車(FCEV)も楽しめる時代が到来!と感じられる。(文:竹岡 圭/写真:永元秀和)
トヨタ ミライ Z 主要諸元
●全長×全幅×全高:4975×1885×1470mm
●ホイールベース:2920mm
●車両重量:1930kg
●モーター:交流同期電動機
●最高出力:134kW(182ps)/6940rpm
●駆動方式:RWD
●燃料種類:圧縮水素
●水素タンク容量:141L(前64L+中52L+後25L)
●水素有効積載量:約5.6kg
●一充填走行距離:約750km(※)
●タイヤサイズ:235/55R19
●車両価格(税込):790万円
※水素有効搭載量とWLTCモードによる燃料消費率を乗算した参考値