対モータージャーナリストではなく、人としての付き合いが深まる
印象に残っているのは、RX-7(FD3S)の完成間際にアメリカで試乗を行ったときのこと。
「当時テストドライバーだった小田さんが運転席に、となりに山口さんが乗って、真夜中のワインディングを走行したんです。テスト走行ですから、それなりの走りをするわけです。翌日の昼間に同じ場所を走行したら、ガードレールもろくにない崖地で『昼間だったらとなりに乗りません』って笑ってました。山口さんも運転は好きだと思いますが、レーシングドライバーではありませんから、一般ドライバーと同じ目線の評価もできる。これがすごく参考になるんです」
テストコースがサーキットだと、どうしても速いクルマが優れていると評価される。しかし、実際は路面が悪かったり高速道の継ぎ目があったりするものだ。それらを加味して評価できるのが、モータージャーナリストとしての魅力を広げている。
「九州で他社の試乗会があった時に、すぐに訪ねてきてくれて、ともに楽しい時間を過ごしました。以前はエンジニアとモータージャーナリストの関係でしたが、今は知人として付き合いを深めています」
貴島さんがマツダを退社し、大学の教授として学生フォーミュラに参加するようになった。すると、山口さんとは毎年顔を合わせることになり、ますます親交が深まっていった。
「うちの学生を自動車雑誌に載せてくれたことがあって、それを見てようやく学生たちは山口さんのすごさに気づいたみたいです(笑)。海外の0→100km/hが1.5秒なんてEVフォーミュラマシンの画像を見せてもらったり、学生たちもいい刺激になったと思います」
毎年学生フォーミュラの会場でお会いする楽しみも加わり、学生たちの成果を見てもらうことも、ひとつの課題となっている。貴島さんと山口さんは、これからも濃い付き合いが続いていくのだろう。