ボルボの良さを残しつつ明らかに新世代へと進化
今回の試乗車はT6というグレードで、搭載エンジンは直列6気筒の3Lユニットにターボを組み合わせた285ps仕様だ。今後エンジンラインアップはさらに増えそうだが(そればかりか2WDの投入もあるようだ)、当初はこのパワフルなガソリンエンジンと、2種類の5気筒2.4Lディーゼルターボというラインアップ。来年後半の日本導入は今のところガソリンエンジンのみとなる模様で、今回乗ったT6はトップエンドとなる。
すでにV70にも搭載され日本の地を踏んでいるこのエンジン、最大トルクの400Nmを1500〜4800rpmというワイドな領域で発生することもあって、実用域の使いやすさ/力強さは申し分ない。反面、高回転域のパンチはそこそこだが、直6のスムーズなフィールや、ギアトロニック(マニュアルモード付き6速AT)の相性の良さも含めて、これは良い意味での既存技術の継承と言える。
駆動は電制ハルデックス・カップリングを用いたオンデマンド式4駆ながら、スタートから後輪にもトルクを割り振るプレチャージシステムを導入した4WD。ラフロード走行を想定してヒルディセンドコントロールも搭載するが、このあたりは他のXCシリーズでもお馴染みだ。
4WDとは言え、基本的には前輪を主に駆動するこのシステム。世の中の大型FFモデルは過大なトルクが前輪に集中することから、エンジンの揺動を抑えきれずステアフィールに荒さを残すケースが多いのだが、ボルボはエンジンマウントなどに特段の工夫を凝らし、極めてスムーズなフィールを手に入れている。これはP2プラットフォームに共通する大きな美点と言っていい。
走りは格段にニンブルになったXC60だが、こうしたベースの部分でのボルボの良さ、味わい深さはきちんと残してあるのだ。
そして、何よりもボルボらしいと思わせるのが、安全に対する独自の深いこだわりである。
XC60もまた、ロールオーバーを防止するブレーキ制御機構のRSC、後方からのクルマの接近を知らせるBLIS、車線逸脱警報のレーンデパーチャーウォーニング、レーダーセンサーを使ったアダプティブクルーズコントロールと車間距離警報のコリジョンウォーニング&オートブレーキといった安全装備が満載(一部オプションもあり)なのだが、これに加え「シティセーフティ」という新しい機構が加わった。
これはフロントウインドウ上部に設けた2つのレーザーセンサーで前方を監視し、30km/h以下でドライバー操作がない場合に自動的にブレーキをかけ追突を防止/軽減するというもの。相手との速度差が15km/h以下ならほぼ衝突を回避できる。実際に試したが、転ばぬ先の杖としてかなり有効だと思われた。ボルボ側としても自信作らしく、XC60全車に標準装備というから凄い。
ただ、日本では国交省の指針に合致しないため、来年の秋頃と言われる導入で、この機構が機能させられるか現時点では微妙な情勢のようだ。機能停止となったら誠に残念だが、いずれにせよこのXC60は、ボルボらしさを兼ね備える注目のニューモデルとなるのは確かで、個人的にはV70を超える人気を得る可能性すら感じられた。(文:石川芳雄)
ボルボXC60 T6 AWD 主要諸元
●全長×全幅×全高:4628×1891×1713mm
●ホイールベース:2774mm
●車両重量:1825-1990kg(EU)
●エンジン:直6DOHCターボ
●排気量:2953cc
●最高出力:210kW(285ps)/5600rpm
●最大トルク:400Nm/1500-4800rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・70L
●EU総合燃費:8.4km/L
●最高速:210km/h
●0→100km/h加速s:7.5秒
※欧州仕様