大きく変わったエクステリアデザインや大画面ディスプレイで構成されたインテリアなどが賛否両論となっているメルセデス・ベンツのフラッグシップ、新型Sクラス。実際にS500 4マティックAMGラインに試乗した筆者、島下氏はどのように感じたのだろうか。進化の真意はどこにあるのだろうか。(Motor Magazine2021年5月号より)

歴代のSクラスの中で一番ワインディング路が気持ちいい

走りっぷりはどうか。アルミ比率が50%以上とされ、遮音材が構造材に一体化された軽量・高剛性ボディの恩恵は、まず類まれな静粛性に結実している。エアサスペンションはEクラスなどと同じく3チャンバー式とされ、日常域でのしなやかさと高速域でのフラット感を、より高い次元で両立。先代よりふんわり感はわずかに薄らいだが、代わりに格段に落ち着きが増した乗り味は絶品である。

しかもフットワークが素晴らしい。操舵の後、グラっと傾く動きが消えて自然なロール感で気持ち良くターンインできる。そして旋回特性は、試乗した標準ボディでも5.2mを超える全長を意識させないニュートラルなもの。ワインディングロードがこれほど気持ちいいSクラスは歴代初だろう。

これには新採用のリアホイールステアの貢献度が大きそうだ。実際、外から見ていると、山道でも駐車時でも想像以上に後輪がグイグイ操舵しているのだが、それでいてこれっぽっちも違和感を抱かせることはないのだから見事だ。

3L直列6気筒ターボエンジンに電動コンプレッサー、ISGを組み合わせたS500のパワートレーンは、滑らかな吹け上がりと電動化のメリットをフルに活かしたツキの良さが心地良い。4MATICの安心感も、ついつい右足に力が入る要因となった。

外装デザインを見て、インフォテインメントシステムを体験したところで頭に浮かんでいた思いが、実際に走らせて確信に変わった。新型Sクラスはリアシート重視のフォーマルセダンから、ドライバーズカーへと変貌を遂げている。声高にそう主張しているわけではない。

しかしながら世界のSクラスユーザーの主流は今や、若くアクティブな成功者達に違いない。彼らはリアシートでおとなしくしているより、行き先を自ら決めることを求めるはずだ・・・という変化は必然と言っていい。

しかも、それを圧倒的な快適性、フォーマル性、リアシートの居住性などを犠牲にすることなくやってのけたのが新型Sクラスである。正直、初めて自分で所有する姿を想像してしまったが、それは筆者もそれなりの年齢になってきたことだけが理由ではないはずだ。(文:島下泰久/写真:永元秀和)

画像: 3L直6ターボエンジンにISGを組み合わせる。効果は大きく、とくに発進時のスムーズさはSクラスに相応しい。

3L直6ターボエンジンにISGを組み合わせる。効果は大きく、とくに発進時のスムーズさはSクラスに相応しい。

メルセデス・ベンツ S500 4マティックAMGライン 主要諸元

●全長×全幅×全高:5210×1930×1505mm
●ホイールベース:3105mm
●車両重量:2050kg
●エンジン:直6 DOHCターボ+モーター
●総排気量:2996cc
●最高出力:320kW(435ps)/6100rpm
●最大トルク:520Nm/1800-5800rpm
●トランスミッション:9速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・76L
●WLTCモード燃費:11.2km/L
●タイヤサイズ:255/50R18
●車両価格(税込):1375万円

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