開発は初代を振り返るところから始まった
BMW X5やボルボXC90、メルセデス・ベンツMクラスに代表されるクロスオーバーSUV(CUV=Crossover Utility Vehicle)は世界的にヒット。X3やXC60、GLKなどを生み出し、その裾野を大きく広げている。ピックアップトラックをベースとしたSUVよりも、オンロードの性能に優れ、軽量であるため燃費もいいなどといったメリットが、こうしたCUVがヒットした要因のひとつなのだろう。
ティアナにも採用されたFF-Lプラットフォームを使った初代ムラーノ(Z50型)が北米でデビューしたのは2002年。2004年には日本へも導入された。そのムラーノが2代目(Z51型)に進化、初代のいいところを引き継ぎ、さらにブラッシュアップさせたという。プラットフォームには、2代目ティアナにも使われたDプラットフォームを採用。搭載エンジンはQR25DE型2.5L直4とVQ35DE型3.5L V6の2機種。先代モデルにあったFFモデルは設定されず、4WDモデルのみが日本では販売される。
北米ではFFモデルもあるのに、どうして日本仕様では重量や価格、そして燃費が不利となる4WDモデルのみのラインアップになったのだろうか? この疑問をムラーノの運動性能に携わった車両運動性能開発グループの富樫さんに聞いたところ「プレミアムSUVとして納得できるレベルの走り味を出すには4WDシステムの採用が不可欠であった」とのこと。さらに燃費に関しても「トランスミッションにCVTを採用したことで、先代よりも燃費はよくなっているんです」という。たしかに、重量は新旧250XV比で100kgほど重くなったが、それがネガにならないクルマづくりを実現したようだ。
4WDシステムは、従来のオールモード4×4から4×4-iに進化した。これは、ドライバーの操作や車両の挙動を瞬時に判断し、前後のトルク配分を最適に制御するというもの。また、足まわりの剛性を上げて振動を低減、ノイズは発生源近くで抑える設計とするなど、振動や音対策も強化されている。
試乗モデルは、350XV FOURと250XV FOURの2台。実際に試乗したその乗り味を表現すると「おおらか」という表現がしっくりくるようなものだった。真っ直ぐな道を「ゆったり」と流していると快適この上ない。しかし、高速コーナーになると車体の姿勢変化が大きくなる。このような場面は苦手なようだ。ムラーノには、日本に多くある曲がりくねった道よりは、北米によくある、直線がどこまでも果てしなく続く道を走っているのが似合うのだろう。
パワーはもちろん3.5Lの方があるが、軽快さは2.5Lの方が感じられた。それは車重の差だけではなく、3.5Lの方がパワフルと感じられたのは、常用域の低速トルクを重視したエンジンのセッティングと、ローギアで加速ができるようにしたCVTのセッティングによるところが大きいようだ。ちなみに2.5L車はレギュラーガソリン仕様となっている。これはうれしい。
特筆すべき装備は、電動開閉式のテールゲートとBOSEサウンドシステム。これはいい。前者は、開閉時に周囲に注意を促すアラームとハザードが点滅するというもの。また後者は、車両の設計段階から開発されていたこともありその完成度も高い。臨場感に溢れる音源が再生されているので、機会があればそのサウンドを体験してほしい。ともにメーカーオプションだがぜひ装着したいアイテムである。(文:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:原田 淳)
日産 ムラーノ350XV FOUR主要諸元
●全長×全幅×全高:4825×1895×1730mm
●ホイールベース:2825mm
●車両重量:1850kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3498cc
●最高出力:191kW(260ps)/6000rpm
●最大トルク:336Nm/4400rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:4WD
●車両価格(税込):404万2500円(2008年当時)