小さなボディから想像できないほどの快適性
ルノーのAセグメント車、トゥインゴがフルモデルチェンジされて2代目となった。
全長が175mm、全幅が25mm、全高が35mm大きくなったエクステリアは、薄いアッパーグリルに大きなアンダーグリルという新しいルノーのアイデンティティが与えられたこともあり、全体にキリッとしている。先代の笑みを浮かべたような顔が好みだった人は、ちょっと複雑な気持ちになるかもしれない。
しかし、細かく見ていくと、スペース効率を考慮して立てられたリアドアや、先代のデザインをそのまま引き継いでいるドアハンドルなど、紛れもなくトゥインゴの2代目であることがわかる。
そのことは、インテリアを見るとさらに強く感じられる。シートの柄こそグラデーションなどの遊びがなくなりシンプルなものになったが、この2代目でもデジタル式のスピードメーターがセンタークラスター上部に置かれている。そして、その手前に丸いドーム型のハザードスイッチが設置されているのも先代と同様だ。
ウインカー使用時のメーター内表示が、右左折時にもハザード表示になることや、ホーンボタンがウインカーレバーの先端にあることも、先代からの乗り換え組にトゥインゴらしさを感じてもらうために残したという。このホーンボタンの位置は、トゥインゴだけでなく、過去のフランス車に乗ったことのある人の心もくすぐるはずだ。
新型らしい部分といえば、右ハンドルが設定されたことと、さらに運転席の目の前にタコメーターがセットされたことだろう。
先代ルーテシアのシャシを使っているためホイールベースが2365mmあり、Aセグメント車とは思えないほど広い室内空間を備える。フロントシートは見た目にもしっかりしたもので、体を沈み込ませることなく支えてくれる。座った際もサイドウインドウの下端が低いため、視界が広く開放感がある。
4人乗りと割り切ったリアシートは、フロントシートと変わらない大きさがあり、220mmのスライド量とリクライニング機能で快適に座ることができる。また、ダブルフォールドすれば959Lのラゲッジスペース容量を得られる。こうした使い勝手の良さも魅力のひとつだろう。
試乗車は1.2L NAエンジンを搭載するベースモデル。組み合わされるのは、2ペダルMTのクイックシフト5。MTモードでは押してシフトアップ、引いてダウンとなる。シフトノブを1度左に倒すとATモードへ変わる。
ATモードで駐車場を出る。シフトアップ時に少しアクセルを戻せばギクシャク感なくギアが変わり、街中でのストップ&ゴーでもわずらわしさはない。30〜40km/hでのシフトアップはだいたい2500〜3000rpmあたりに行われるので、すぐに慣れることができた。
自分でギアを選択するMTモードでは、アクセルを戻すタイミングがわかるので、ギアのつながりをよりスムーズにすることができ、操る楽しさが感じられる。
ただ、高速道路への合流時には、980kgという比較的軽い車重ながら、最高出力が75psということもあり、加速がもの足りないなと感じることもあった。それでも、高速巡航時の電動パワーステアリングは、適度な重さで直進安定性も高く安心して走ることができる。また、道路の継ぎ目などによるショックをうまくいなす足まわりとシートの厚みによって、長く乗っても疲れないだろうなという印象を受けた。こうした乗り心地も、フランス車らしいと感じられた部分だ。
さて、トゥインゴには最高出力100psを発揮する1.2Lターボを搭載する「トゥインゴGT」も用意されている。こちらは5速MTが組み合わされ、足まわりにも専用のラバーブッシュとフロントダンパーを採用している。機会があればこちらにも試乗してみたい。
初代トゥインゴは世界累計販売240万台以上の人気モデルだった。そして2代目トゥインゴはそのコンセプトをしっかりと受け継いでいる。しかし、懐かしさだけでなく、現在のニーズに応えるようにアップデートされていた。(文:Motor Magazine編集部/写真:永元秀和)
ルノー トゥインゴ 主要諸元
●全長×全幅×全高:3600×1655×1470mm
●ホイールベース:2365mm
●車両重量:980kg
●エンジン:直4 SOHC
●排気量:1148cc
●最高出力:56kW(75ps)/5500rpm
●最大トルク:107Nm/4250rpm
●トランスミッション:5速AMT
●駆動方式:FF
●車両価格(税込):198万円(2008年当時)