トルクのある大排気量ディーゼルエンジンはSUVにぴったり
アウディはディーゼルエンジンについて、非常に深い思い入れを持っている。そして、その優れたところを世に知らしめてきたが、とくに注目すべきは「ディーゼルはスポーティである」ということを積極的にアピールしていることだ。
そのデモンストレーションの端緒といえるのは2006年、V12ディーゼルを搭載するアウディR10によるル・マン24時間レースへの参戦、そして優勝だが、その後もスポーツクーペのTTにディーゼルを搭載するなど、活発な動きを見せている。
そして、ここで紹介するのが世界最強のディーゼルエンジンを搭載するSUV、アウディQ7 V12 TDIクワトロだ。量販を狙うものではないが、TDIのイメージ戦略の中に、しっかりと位置づけられる重要なモデルだ。
まずスペックを確認しておこう。6L V12ディーゼルの最高出力は500psで、最大トルクは1000Nm。最高出力はカイエンターボと同一、最大トルクはメルセデスベンツの65AMG(6L ガソリンSOHCターボ)と同じで、市販車最強レベルだ。
この強大なトルクで、2605kgもあるボディをわずか5.5秒で100km/hまで引っ張ってしまうというから畏れ入る。ちなみにこの数字はポルシェケイマンS(5.4秒)並み、ケイマン(6.1秒)よりも遙かに速い。
燃費のことも報告しておかなくてはならない。EU総合モードで8.8km/Lだ。圧倒的なパワースペックから勘案すると、かなり良好といえるだろう。
さて、そんなモンスターに試乗した印象を報告しよう。若干の緊張感を持ってアクセルペダルを少しだけ踏んでみる。なにぶんこの強大なトルクだから、アクセルペダルを踏み過ぎたら大変なことになるだろうと思ったからだ。しかし、それはまったくの杞憂だった。
Q7は繊細にジワリと動き出し、その後は若干ラフにアクセルペダルを踏んでも、荒々しさなどは微塵も感じられなかった。非常に運転しやすい。やはりこの手の重量級SUVには、低回転から太いトルクが出る大排気量ディーゼルがぴったりだと実感した。
アウトバーンを走ることはできなかったので、超高速域のことはわからないが、おそらくアクセルペダルを踏んでいると、図太いトルクを感じ続けながら、そのままリミッターが作動する250km/hに達してしまうのだろう。
「コーナリングはあまりいいフィーリングではないのでは?」と想像していたが、そうではなかった。80km/hくらいで旋回する中速コーナーは実に気持ち良かった。車両重量に合わせてサスペンションは固められているのだろうが、しなやかさも合わせ持っている。
走りは以上のような印象だが、スタイリングもなかなかよい。他のQ7のフロントまわりには鈍重なイメージがあるが、これはかなりアグレッシブだ。他のモデルもこの顔にした方がよいかも知れない。
さて、この史上最強のディーゼルSUVは、2008年末から欧州で販売が開始される。日本への導入は未定とのこと。ちなみにエミッションクラスはユーロ4だ。(文:Motor Magazine編集部 荒川雅之)
アウディQ7 6.0 TDIクワトロ主要諸元
●全長×全幅×全高:5063×2000×1697-1772mm
●ホイールベース:3002mm
●車両重量:2605kg
●エンジン:V12DOHCディーゼルツインターボ
●排気量:5934cc
●最高出力:368kW(500ps)/3750rpm
●最大トルク:1000Nm/1750-3250rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●0→100km/h加速:5.5秒
●最高速度:250km/h(リミッター)
※欧州仕様