長距離ドライブはクルマの楽しみ方のひとつである。旅先で待っている、日常とは離れた世界に癒され、心が躍り、好奇心が湧くからだ。今回はボルボ V90のPHEV(V90 リチャージプラグインハイブリッド T8)で、東京→南紀→大阪→琵琶湖を巡り、走行距離1600kmを超えるロングドライブに出かけ、多くの景勝地を訪れた。(Motor Magazine2021年6月号より)

気軽に行ってみたいところや初めての場所にも訪れてみる

彦根城には、今回初めて訪れた。1604年に工事が始まったこの城は一部が国宝に指定されるほど貴重な存在。そんなことは私にいまさら言われなくても多くの方々がご存じだろうが、天守のなかを見学すると、やはり本物でしか味わえない雰囲気が漂っていて圧倒される。もしかすると、それは床や柱に用いられた木材が、当時の武将たちが呼吸したのと同じ空気を留めているせいかもしれない。

続いて城の近くの人気のそば屋で空腹を満たし、ここから一気に東京を目指すことにした。距離にしてざっと400km、およそ5時間のロングドライブである。まずは60Lの燃料タンクをガソリンで満たすと、メーター内に走行可能距離が740kmと表示された。この足の長さは、やはりエンジン車だけの持ち味。その気になれば一度も休憩せずに東京まで走りきれるのは大きな魅力と言える。

V90には、私を含む大人3名が乗車。しかも、大量のカメラ機材に加えて3人3泊分の手荷物まで積み込んでいたが、たっぷりしたキャビンスペースのおかげで窮屈とは感じない。昔もいまも、ボルボのワゴンの実用性が高いことには変わりがないようだ。

キャビンといえば、ボルボのインテリアは相変わらず魅力的。シンプルななかにも人の温もりが感じられるダッシュボードまわりは北欧家具に通ずる美しさをたたえているほか、レザーやフェイシアが単調なブラックで埋め尽くされていない点にも心を惹かれる。

試乗車のレザーはブラウンで彩られていたが、同じブラウンでも染色が素晴らしく、落ち着いた雰囲気のなかにもどこか華やかさが感じられる。フランスかイタリアの超高級ブランドが作るハンドバッグに、こんな色調のレザーがあったような気がするくらいである。

画像: 搭載するのは2L直4ターボ+スーパーチャージャーエンジン。これに電気モーターが組み合わされる。

搭載するのは2L直4ターボ+スーパーチャージャーエンジン。これに電気モーターが組み合わされる。

318psと400Nmを生み出す2Lターボチャージャー+スーパーチャージャーエンジン。さらにそれに加え電気モーターも組み合わされるのだから「全部乗せ」状態である。人と荷物を満載した状態でも十分以上の力強さを発揮してくれた。過給装置が2段構えになったエンジンと聞くと、なんだか扱いにくい特性を想像してしまうが、ボトムエンドからレブリミット付近までトルクの谷のようなものを感じさせることなく、レスポンスやドライバビリティは良好。

燃費も魅力的だ。今回の長旅でも通算で12.2km/Lというデータを残した。充電回数は前述した1度のみ。さらに人と荷物を満載していたことを考慮すれば十分に納得できる数値である。

ただスタッドレスタイヤを履いていた影響なのかもしれないが、タイヤからのノイズ、そして高速走行時に路面から伝わる細かい振動はもう少し抑えられていてもいい。もっとも、新世代ボルボの象徴ともいえるプラットフォーム、SPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)は、デビュー当時から比べるとずいぶんと洗練され、サスペンションのストローク感はよりしなやかになって快適性も格段に向上している。このあたりの進化はしっかりと評価していいだろう。

ボルボからはただの機械とは違う温もりが感じられる

細かなところに注文はつけたが、それ以上に大切なことは、400kmを一気に走ってもほとんど疲れることなく、身体のどこにも不自然な凝りや痛みが残らなかった点にある。このあたりは乗り心地やマッサージ機能まであるシートの良さに加えて、標準で装備される先進安全機能の効果もあったはず。パイロットアシストを使えば、ロングドライブの途中でも体勢を微妙に動かすのは容易。これが疲れや凝りを防ぐうえで効果があることは広く知られているとおりだ。

さらに付け加えれば、やはりボルボには冷徹に組み上げられただけの精密機械とは、ひと味もふた味も異なる人の温かみが感じられる。前述したノイズや振動にしても、乗っているうちにほとんど気にならなくなったのは、このあたりが大きく影響しているようだ。

ただの機械とは思えない温もりと優しさ。多くの人がボルボに惹かれる理由は、ひょっとするとこんなところにあるのかもしれない。(文:大谷達也/写真:小平 寛)

画像: ボルボが長年にわたり培ったワゴンづくりの経験がラゲッジルームに生かされている。

ボルボが長年にわたり培ったワゴンづくりの経験がラゲッジルームに生かされている。

ボルボ V90 リチャージプラグインハイブリッド T8 AWD インスクリプション 主要諸元

●全長×全幅×全高:4945×1890×1475mm
●ホイールベース:2940mm
●車両重量:1980kg
●エンジン:直4DOHCターボ+スーパーチャージャー+モーター
●総排気量:1968cc
●最高出力:233kW(318ps)/6000rpm
●最大トルク:400Nm/2200-5400rpm
●モーター最高出力:前34kW/2500rpm、後65kW/7000rpm
●モーター最大トルク:前160Nm/0-2500rpm、後240Nm/0-3000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・60L
●WLTCモード燃費:13.8km/L
●タイヤサイズ:245/40R20
●車両価格(税込):1014万円

This article is a sponsored article by
''.