レクサスの未来を具現化するLF-Zエレクトリファイド
3月末にレクサスはブランド変革に向けた新たな取り組みを明らかにした。無論このご時世、中身のほとんどは電動化戦略である。
その趣意は、環境性能や地域のニーズに寄り添い、BEVだけでなくPHEV、HEVを積極的に投入していくということ、2025年までに約20の新型や改良モデルを投入し、そのうち以上が電動車になるというもの。
そして、まさにその2025年までの実現を見据えたデザインや技術、走りなどを盛り込んだというコンセプトカー、「LF-Zエレクトリファイド」がお披露目された。その先進的なデザインをまとったボディは全長4880mmで、2950mmという長めのホイールベースを持つ。これは90kWhという大容量バッテリーの搭載を想定したものである。
航続距離は600kmとバッテリー容量からすれば相当意欲的な数字だが、2100kgという車重を見ると、ここにポイントがありそう。おそらくは車体の側でアルミやCFRPの積極採用により重量を削減していくことが念頭に置かれているのだろう。
DIRECT4が可能にする新時代の駆動力コントロール
そして注目なのが、高出力モーターを活かした四輪駆動力制御技術「DIRECT4」だ。BEVだけでなくハイブリッド車への使用も考えられているこの技術を、LF-Zエレクトリファイドは前後アクスルにそれぞれ電気モーターを備えたAWDとしてフルに活用している。
そのメリットは、前後駆動力配分を自在に制御できること。理論上、直結AWDから前輪駆動にも後輪駆動にも瞬時に変化させることができる。しかも途中にギアを挟まず電気モーターから直接ドライブシャフト、そして車輪に接続できるためレスポンスにも優れる。
この駆動力と4輪の制動力を統合制御することで、これまで不可能だったドライビングダイナミクスを実現するのがDIRECT4だ。しかも、そこにはステアバイワイヤの技術も組み合わされている。レクサスは独自の乗り味の指標として「レクサスドライビング シグネチャー」を定め、DIRECT4を用いて、それを徹底的に追求していく考えだ。
内燃エンジン車には不可能な緻密な駆動力制御による卓越した運動性能こそ、BEVの最大の魅力になる。以前、レクサスの佐藤恒治プレジデントは電動化についての会話の際に筆者にそう話してくれた。環境性能、静けさ、滑らかさだけでない魅力があれば、電動化の時代もブランドの個性を強く主張できる。DIRECT4は、そのカギになる技術なのである。(文:島下泰久)
レクサスUX300e試乗:ブランド初のBEVにして完成度高し
BEVレクサスの第一弾となるUX300e。プラットフォームや制御システムは、先に中国で発売されたC-HRベースのBEVと共通なので、比較的早く送り出せたのだろう。軽量・コンパクトな永久磁石式同期電動機をフロントに搭載した、いわゆる1モーターのFWDタイプとなる。
しかし、エクステリアは充電口とマフラーがないくらい、インテリアもシフトレバー周り以外はほぼ同じなので、実はUXに新しいパワートレーンが加わりました、という立ち位置の方がわかりやすい。逆に構えることなく、装備のひとつとしてパワートレーンを選択する時代がやってきたということなのだろう。
裏を返せば、UXと変わらないレクサスらしさが求められるという高いハードルを課されたわけだが、エンジンの音や振動がない代わりに、それで誤魔化してもらえていた分もなくなるわけで、ロードノイズや風切り音を消すのはかなり厳しかったことは想像に難くない。しかし、少なくとも前席は見事にコントロールされており、レクサスらしいたおやかな空間が具現化されていた。
また、足まわりの絶妙なチューニングで、重量が増えた分のドタドタした乗り心地もなく、最初のひと転がりからパワーを発揮できるモーターのおかげで、繊細なコントロールも可能。多くの人がレクサスにもっているイメージに、BEVはとても相性がいいように思える。今後の展開に早くも期待が高まった。(文:竹岡 圭)
レクサスUX300eバージョンL主要諸元
●全長×全幅×全高:4495×1840×1540mm
●ホイールベース:2640mm
●車両重量:1800kg
●モーター:交流同期電動機
●最高出力:150kW(203ps)
●最大トルク:300Nm
●バッテリー総電力量:54.4kWh
●WLTCモード航続距離:367km
●駆動方式:FWD
●タイヤサイズ:225/50R18
●車両価格(税込):635万円