BMWの新型M3/M4には3L直6ツインターボ「S58B30Aエンジン」が搭載されており、一見先代モデルと変わっていないようだが実はそうではない。ここでは歴代モデルの進化と共に最新エンジンを解説する。(Motor Magazine2021年6月号より)

直4NA→直6NA→V8NA→直6ツインターボへの変遷

新型M3とM4が登場したところで、BMW M社が開発した歴代3シリーズベースのMの日本導入モデルのエンジンを解説しよう。Mモデルには約40年の歴史があるが、そこに搭載されるS型エンジンの5つの特徴は一貫している。

①ハイパフォーマンス:これは最高出力と最大トルクが並のエンジンより高いこと。
②高回転型:出力(仕事量)を高めようとする時はトルクを太くするか回転数を高める方法がある。S型エンジンは高回転型にしている。
③ハイレスポンス:アクセルペダルの応答性が素早いことは、サーキットを走る上では重要な要素になる。
④サーキット走行に対応:ハイスピードでの高が続くサーキットでは冷却系、オイル潤滑系が重要となってくる。
⑤新しいテクノロジーを採用:BMWエンジンに採用するための先行開発の意味もあり、新開発のS型エンジンには専用技術を使う。

これらの特徴を守り抜きながら、S型エンジンは時代と共に進化を果たしてきた。初代からざっと見ていくことしよう。

まず初代M3(E30)のエンジンは、2.3L直列4気筒(S14B23型)だった。M3スポーツエボリューションというE30 M3の最終モデルでは、2.5Lに排気量をアップ。238psと240Nmを発生した。2世代目のM3(E36)は3L直列6気筒(S50B30型)になった。インテーク側のみVANOS(可変バルブタイミング機構)を組み込んだのが特徴で、後期モデルでは排気量が3.2Lにアップして、321psと350Nmと順調にパワーとトルクがアップした。

画像: 初代E30には2.3L直4自然吸気のS14B23型を搭載。初期型は194ps/230Nmで、後に排気量を2.5Lに上げて、238 ps/240Nmにアップした。

初代E30には2.3L直4自然吸気のS14B23型を搭載。初期型は194ps/230Nmで、後に排気量を2.5Lに上げて、238 ps/240Nmにアップした。

3世代目(E46)も直列6気筒で、排気量は3.2L(S54B32型)と先代の後期型と同じだが、今度はエキゾースト側にも可変バルブタイミング機構が付いてダブルVANOSに進化。ボディを軽量化したCSLモデルでは360psと370Nmとさらなる動力性能向上を果たしている。4世代目(E90/E92)のM3/M4は4LのV型8気筒(S65B40A型)を搭載。直6と同等まで軽量化されたこのエンジンは、ベッドプレート方式でクランクシャフトを支え、アルミニウムのシリンダーブロックを採用した。ここまでは自然吸気の時代だが、次からは方向転換してターボチャージャー付きの時代になる。

5世代目(F80/F82)は3L直列6気筒+ツインターボエンジン(S55B30A型)を搭載する。通常のBMW 6気筒エンジンはシングルターボだが、Mモデルはツインターボでレスポンスとパワーを稼ぐ。トピックは最後に登場したGTSで、500psと600Nmを発生するのだが、500psを発生させる燃焼室を冷やすためにウォーターインジェクションシステムを採用。トランクの床に埋め込んだ水タンクからエンジンルームに水を引き、負荷が大きい時にインテークマニフォールド内部に水を噴射するのだ。

これで燃焼室を冷却してノッキング限界を高めてパワーアップを果たした。もし水を使い切っても、最高出力は出せないが普通に走れるので安心だ。要するにターボチャージャーのブースト圧を高めても、冷却が追いつかなければパワーは出せない。次モデルでは秘策によって、ウォーターインジェクションなしでもさらなるパワーアップを果たした。

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