2021年4月19日に開幕した上海モーターショーはまさにBEV一色。その背景にあるのはさまざまな思惑だが、従来から積極的だった欧州勢に加えて今回は日本勢の果敢な出展も注目されたのだが・・・。(Motor Magazine2021年6月号より)

クルマ選びの基準にも変化が、だが焦る必要がないのも事実

これは日産の功績大と言うべきだが、実は日本はBEVの使用環境として世界のトップランナーのひとつだと言っても過言ではない。何しろこの国土に、2万を超える公共充電器が用意されているのだ。

しかし、それゆえにBEVについては、多くの人がメリットと同時にとくに充電にまつわる諸問題を理解している。数はこれでもまるで足りず、整備状況にも問題を抱えていることも熟知しているとも言える。つまり日本のユーザーは、BEVの夢のその先まで理解しているのだ。ゆえに海外から聞こえてくる急速なBEVシフトの足音にも、どこか冷ややかになってしまう。

それでも将来的なクルマの方向性が、すべてBEVかどうかはともかく電動化であることは間違いない。化石燃料依存から脱却し、再生可能エネルギーを中心に多様なエネルギーを利用可能なことが、その最大のポイントだ。

とは言え、それが実現するにはまだ時間が必要なのも事実だろう。アメリカもヨーロッパも、今の日本と同じ状況を通過しなければ、その先はない。しかも今後当面は、BEVの台数が増えるほどにこの問題は拡大していくに違いない。

画像: ポルシェと共同開発した次世代BEV専用プラットフォーム(PPE)を採用するアウディA6 eトロンの登場も控える(写真はコンセプトモデル)。

ポルシェと共同開発した次世代BEV専用プラットフォーム(PPE)を採用するアウディA6 eトロンの登場も控える(写真はコンセプトモデル)。

そう考えると、BEVは今のところ誰にもお勧めの選択肢筆頭ではなく、自分のニーズに合うと確信する人だけが選ぶべきクルマだと思う。自宅や近所に充電設備がある、平日はほとんど使わないから週末に充電すれば十分といった人たちと、新しモノ好きで多少不便だろうと面白いクルマに乗りたいという趣味人が、今すぐBEVを買っていい人たちである。

クルマ選びも当然、さらに重要になる。たとえばホンダeやマツダMX-30(EVタイプ)は航続距離の短さに批判の声があるが、ふだん長距離を乗ることがほとんどなく、街中での使用が大半という人には、これらこそがぴったりのはずで、そういう人こそが選べばいい。

一方、大容量、長距離、高い動力性能がマストという人もいる。こうなると趣味の領域に入ってくるから、ポルシェ タイカンやアウディ eトロンGTなど、便利だろうが不便だろうが好きになったらどうぞ、というところだ。かつて「V8ツインターボは燃費が大変」と言いながら乗っていた人たちが、これからは「BEVは充電が面倒」になる感じ、だろうか。

当面はこんな両極からBEV市場が拡大していくのだろう。次代はBEVだと騒がれようと、そのうちに充電にまつわる部分をはじめとする環境が整ってきたなと感じたときが、自分にとってのBEV時代到来。そんな風に考えていればいいのではと思う。歴史の扉はまだ開かれたばかりなのだから(文:島下泰久)

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