「温故知新」の逆というわけではないが、最新のプジョー車に乗りながら、古(いにしえ)のプジョー車に思いを馳せてみたい。連載第1回となる今回は、プジョー 308から歴代の「300シリーズ」を振りかえってみよう。(タイトル写真上は現行型308、下は306)
ライバルのゴルフより歴史の古い300シリーズ
300シリーズは、フォルクスワーゲン ゴルフのライバルにあたり、現行308はスタイリングもゴルフのようなスタンダード感のある2BOX ハッチバックだ。ただ、ゴルフは1974年の初代モデルから2BOX ボディを現在まで連綿と進化させ続けているが、プジョーの300シリーズは時代によって姿かたちを変えてきている点が興味深い。
実は300シリーズの歴史はゴルフよりずっと古く、1930年代の301までさかのぼる。もっとも第2次大戦を挟んで長く中断し、戦後は1969年の304で再スタートしている。
304は、3BOXのセダンだった。当時はこのクラスでもそれが一般的で、むしろ戦後の新しいスタイルだった。ただ同国のルノーやシトロエンが早くから2BOXやファストバックを採用していたこともあり、「フランス車としては保守的」と説明されがちだった。とはいえプジョーは、堅実で思慮深いクルマづくりをするメーカーとして名を馳せていたので、「保守的」というのも、むしろ褒め言葉だったといえる。
そもそも、304はエンジンを横置した前輪駆動方式を採用しており、この点は先進的だった。304は、クラスのひとつ下の204をベースとしていて、204が出たのは1965年のこと。4気筒横置エンジンFFをBMCミニが初採用したのは1959年で、プジョーは世界を変えたその設計スタイルを、メジャーブランドとして世界で2番目に採用したのである。