「温故知新」の逆というわけではないが、最新のプジョー車に乗りながら、古(いにしえ)のプジョー車に思いを馳せてみたい。連載第1回となる今回は、プジョー 308から歴代の「300シリーズ」を振りかえってみよう。(タイトル写真上は現行型308、下は306)

ピニンファリーナから離れてデザインが変わる

画像: プジョー300シリーズの本流としては初めて2BOX ボディを採用した306。シャープなデザインで、低く構えたようなスタイル。

プジョー300シリーズの本流としては初めて2BOX ボディを採用した306。シャープなデザインで、低く構えたようなスタイル。

次の305は304の発展型で、2BOX ハッチバックを採用したのは1993年登場の306からだ。306は、スタイルの良さが目立った。戦後のプジョーはピニンファリーナとのコラボレーションが通例で、306はカブリオレ以外は自社デザインともいわれる。しかし、イタリア工房の影響がないとはちょっと思いにくいくらい、歴代300シリーズとして抜群のスマートさが魅力だった。

その次の307でまた、デザインの流儀がガラリと変わった。この頃からインハウスでのデザインへと切り替わり、そこで影響力を発揮したのがデザイン部門のボス、ジェラール・ヴェルテールだ。彼は205開発のときから手腕を発揮していたが、ピニンファリーナとの契約が終了したことで、彼の趣向性が今まで以上に出たようだ。ヴェルテールはモータースポーツ界でも名の知れた情熱家で、自らチームを率いてル・マン24時間耐久レースで長年活躍していた。そのスポーツ志向が、プジョー デザインにも反映されたように思えてならない。

307はスラントノーズとなり、そのノーズは後期型でより長く伸び、さらにモデルチェンジした2007年の初代308では、いっそうとんがったものになった。この308は307の基本的ボディ構造を継承していたので、ノーズだけが極端に伸びたように見え、それはそれで精悍で、間違いなく印象的だったのだが、いささかアンバランスに見えたのも事実。やはりスポーティさを表現したかったのだろう。

そこから現行308でデザインが一転したのは、偉大なボスの引退が背景にあるといってよさそうである。(文:武田 隆)

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