最終盤の劇的逆転は計算どおりだった
ポールポジションからスタートしたフェルスタッペンは、スタートを上手く決めてターン1へ進入したものの、出口で膨らんでしまい、ルイス・ハミルトン(メルセデス)にリードを奪われる。
この後、フェルスタッペンはハミルトンとの差を詰められないまま、しばらく膠着状態が続く。そして1回目のタイヤ交換でレースが動く。17周目に3番手のバルテリ・ボッタス(メルセデス)がピットに入ると、フェルスタッペンもタイヤ交換を行い、アンダーカットを阻止。そして、フェルスタッペンはそのままアウトラップをハイペースで飛ばし、1周遅れでタイヤ交換に入ったハミルトンを見事にアンダーカットすることに成功したのだった。
ここがレースのひとつのポイントだった。このアウトラップの速さでフェルスタッペンがレースの主導権を握ることになる。
再びレースが動いたのは32周目。1回目のピットストップでトップに立っていたフェルスタッペンが、いち早く2回目のピットインを行った。あえて順位を下げて、ミディアムタイヤでメルセデス2台を追いかける「攻めの戦略」に出たのだ。先手を打たれたメルセデス陣営はハミルトンとボッタスをステイアウトさせるしかなかった。
こうした駆け引きは2021年5月の第4戦スペインGPを思い起こさせる。ただし、今回とは逆の立場だ。スペインGPでは、スタートでトップに立ったフェルスタッペンがレースのほとんどをリードしていながら、2ストップに作戦を変更して新しいタイヤを装着したハミルトンに終盤で逆転されたのだ。
フランスGPでレッドブル・ホンダがこの作戦を成功させた裏には、このとき4番手を走行していたセルジオ・ペレスの存在が大きかった。メルセデス陣営にとっては、2ストップに変更するとペレスをオーバーテイクする必要が出てくるため、ステイアウトしてなんとかタイヤをもたせてポジションを守るしかなかった。
しかし、4番手でレースに復帰したフェルスタッペンは、ペレスとポジションを入れ替えてファステストラップを更新しながらメルセデス勢との差を詰め、残り9周でボッタスをパスして2番手に浮上、残り2周となったミストラルストレートのシケインでハミルトンをパスして今季3勝目を挙げた。また、フェルスタッペンはファステストラップによる1ポイントも追加している。
ペレスもボッタスをオーバーテイクして3位でフィニッシュ。レッドブル・ホンダは41ポイントを獲得し、メルセデスとの差を37ポイントに広げた。
周回ごとに風が変わり、タイヤのデグラデーションが予想以上にひどく、コンディションはトリッキーだったが、今回のような戦略を決めるには速さとチーム戦略が必要で、メルセデスとの力関係が逆転しつつあるのかもしれない。
ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは「ポールポジションからスタートしたフェルスタッペン選手は、一度は2番手に下がったものの、メルセデスと異なる戦略を採り、ラスト2周でハミルトン選手を逆転。見事なパフォーマンスで優勝を獲得しました。終始4番手を走行していたペレス選手も、先行する3台との間隔を上手く見計らいながらレースを組み立てて、終盤ボッタス選手を抜いて3位フィニッシュ。マシンのパフォーマンス、ドライバーの腕、チームの戦略などすべてが上手く噛み合い、本当に素晴らしいレースになりました。2人のドライバーが表彰台に上がるとともに、モナコ、アゼルバイジャンに続く3連勝を飾ることができました。またすぐにレースがやってきます、オーストリアでの2連戦に向けてこの勢いを維持していきたいと思います」とコメント。ドライバーは次のように語っている。
マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
「スタートで前に出て後続を突き放すという展開を望んでいましたが、スタート後のターン1でリアを失ってコースアウトし、ルイス(ハミルトン)に前を行かれたことで、簡単なレースにはなりませんでした。すぐに対抗しようと思いましたが、まだレースは長いことが分かっていたので集中し続けました。最初のスティントではルイスと戦えるペースはなかったので先にピットへ入りましたが、ここでアンダーカットが成功して前へ出られるとは予想していませんでした。終盤にかけて少し風が収まり、路面にラバーが乗ってきたことで、そのコンディションにマシンが合っていたので、2ストップ戦略を決断し、それがうまくいきました。オーストリアまでの数日はこの勝利を楽しみ、また戦っていきます」
セルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)
「最高の戦略でした。いいタイミングで適切な判断をして、最高の結果が出せたことは大きいです。最高のマシンを手にしているわけですから、これからもハードワークを続け、さらにいい結果を得られればと思います。2戦連続の表彰台となり、多くのポイントを獲得できましたが、あと3周あればルイスもパスして1-2フィニッシュが果たせたと思うので、僕らにとってホームレースとなるオーストリアではそれが実現できるように、プッシュし続けます。2レース続けてシュピールベルク(レッドブルリンク)でレースがあるのは僕にとっていいことで、1週目でコースに合わせたマシンパフォーマンスについての理解を深め、2週目にはより高いベースラインから臨むことができます。この勢いを維持して、優勝争いに加われればと思います」
タイヤを供給するピレリは「日曜朝の雨が路面に乗っていたラバーを洗い流し、気温27度、路面温度37度と土曜日よりも15度程も涼しい天候となり、また時折吹く強い風の影響もあって、レースは緊迫した戦略的な争いとなりました。また、これらの要因によって左フロントタイヤのグレイニングが増加したことも、今日の鍵のひとつでした。1ストップが予測される中、結果的に、レッドブル・ホンダとマックス・フェルスタッペンが決断した2ストップが正解となりましたが、2ストップと1ストップの差は非常に微妙でした。いずれの戦略も成功させるためには決断力と実行力が求められました。ファイナルラップまで誰も結果を予測できない戦略を見事に実行したフェルスタッペンとレッドブルを祝福します」と分析している。
次戦第8戦シュタイアーマルクGPは、6月25日、レッドブルのホームコース、オーストリアのレッドブルリンクで開幕する。
2021年F1第7戦フランスGP決勝 結果
1位 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)53周
2位 44 L.ハミルトン(メルセデス)+2.904s
3位 11 S.ペレス(レッドブル・ホンダ)+8.811s
4位 77 V.ボッタス(メルセデス)+14.618s
5位 4 L.ノリス(マクラーレン・メルセデス)+64.032s
6位 3 D.リカルド(マクラーレン・メル セデス)+75.857s
7位 10 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ)+76.596s
8位 14 F.アロンソ(アルピーヌ・ルノー)+77.695s
9位 5 S.ヴェッテル(アストンマーティン・メルセデス)+79.666s
10位 18 L.ストロール(アストンマーティン・メルセデス)+91.946s
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13位 22 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)+1周
2021年F1ドライバーズランキング(第7戦終了時)
1位 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ) 131
2位 L.ハミルトン(メルセデス) 119
3位 S.ペレス(レッドブル・ホンダ)84
4位 L.ノリス(マクラーレン・メル セデス) 76
5位 V.ボッタス(メルセデス) 59
6位 C.ルクレール(フェラーリ) 52
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8位 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ)37
14位 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ) 8
2021年コンストラクターズランキング(第7戦終了時)
1位 レッドブル・ホンダ 215
2位 メルセデス 178
3位 マクラーレン・メルセデス 110
4位 フェラーリ 94
5位 アルファタウリ・ホンダ 45
6位 アストンマーティン・メルセデス 40