2L 直4 DOHCと新開発のDCT(パワーシフト)を組み合わせた「2.0e」
初めてデュアルクラッチ式トランスミッション(以下、DCT)のクルマに乗ったのは、5年あまり前のことだった。そのとき受けた衝撃は今でも鮮明に覚えている。タイムラグなしにスパスパとシフトチェンジするフィーリングは、未だかつて味わったことのないもので、1kmも走らないうちに感嘆の声を上げていた。クルマはアウディA3の3.2 FSIクワトロだったが、その後このトランスミッションはゴルフへも移植、さらに成長、成熟していることは、改めて言うまでもないだろう。
実は今回、ボルボC30のパワーシフト(DCT)に乗って、5年前と同等レベルの衝撃を受けた。なぜならこのパワーシフトのフィーリングが、あまりにもトルコン式ATに近かったからだ。それは「言われなければわからない」というレベルではなく、「言われても疑ってしまう」ほどだ。
さて、このパワーシフトと名付けられたDCTは、ボルボとゲトラグの共同開発によるもので、ギアは6速、湿式のデュアルクラッチを持つ。現在、フォルクスワーゲンは、より伝達効率に優れる乾式デュアルクラッチのDSGも用意しているが、パワーシフトは効率と滑らかさを両立するために、湿式を採用したようだ。
トルコン式ATに近いフィーリングというのは微低速で顕著だ。停止状態からブレーキペダルを離すと、トルコン式ATと同じように滑らかにクリープする。そして、アクセルペダルを踏むと、まったくギクシャクすることなく加速を始める。このアクセルペダルを踏み込んだ瞬間が、これまで世界のメーカーから登場した、どのDCTよりも、明らかに滑らかなのだ。
微低速での滑らかさ、扱いやすさというのは実に大切なことだ。狭い駐車場の出し入れや10cmレベルの移動など、これまでのDCTでは例外なく神経を使わされたものだが、パワーシフトならばその点、まったく心配がいらない。あまり運転が得意ではない方でも問題ないだろう。