ゴルフ8はグレード体系を一新。併せてグレード間の標準装備差は大幅に縮小された。そこで悩ましいのは1.0L車にするか、はたまた1.5LのeTSIスタイルを選ぶかという問題だ。もちろん究極の選択としてeTSI Rラインもある。(Motor Magazine2021年8月号より)

ハッチバックのゴルフにRラインが初めて設定された

ゴルフ8はグレード体系を一新した。従来型にあった「トレンドライン」「コンフォートライン」「ハイライン」を止め、新たに1.0L直ターボ+MHEVの「アクティブベーシック」と「アクティブ」、1.5L直ターボ+MHEVの「スタイル」とスポーティな「Rライン」の4グレード構成に刷新されたのだ。ハッチバックのゴルフにRラインが設定されるのは、初めてのことである。

注目すべきは、グレード間での標準装備の違いが大幅に圧縮されたことだ。スポーティな専用装備でまとめられたRラインは別としても、主要な標準装備、とくに機能装備はほぼ全車に搭載されている。あとはパッケージオプションを「足し算」していくだけだから、あれこれと悩むことがほとんどない。購入希望者がクルマになにを期待するかに委ねられているのだ。

ただし、「アクティブベーシック」にはパッケージオプションが設定されていないので注意が必要だ。また、上位3グレードが各席独自の温度設定が可能な3ゾーンフルオートエアコンを標準装備するのに対して、「アクティブベーシック」は通常のフルオートエアコンになること、さらハイビームアシストが設定されないも知っておきたい。

画像: eTSI Activeに搭載されるパワーユニットは、1.0Lの直列3気筒MHEV。絶対的な動力性能では1.5L車にはもちろん及ばないものの、これがなかなか侮れない走りを堪能させてくれる。

eTSI Activeに搭載されるパワーユニットは、1.0Lの直列3気筒MHEV。絶対的な動力性能では1.5L車にはもちろん及ばないものの、これがなかなか侮れない走りを堪能させてくれる。

ともあれ「素のゴルフ8」を楽しみたい、とにかくリーズナブルに最新のゴルフに乗りたいという方にはお勧めできるグレードだ。 そのほか、標準装備関連での違いは、1.5L車はターンシグナルがLEDになるとともに、スタティックコーナリングライトを採用することくらい。あえて言えば、「スタイル」は上質感を狙ったアップグレード車という位置づけなので当然、シート表皮などにはより上質な素材が用いられている。

ゴルフ8の醍醐味を味わいたいなら、パッケージオプションはぜひ選択肢に入れていただきたい。数々の先進装備を上から下まで標準装備化しているのは前述のとおりだが、とくにインテリジェント/デジタル系の恩恵を受けたいならばパッケージオプションの選択は必須と言えるだろう。

「ディスカバープロパッケージ(19万8000円)」はほとんどの購入者が選ぶと思われる。単なるナビゲーション機能だけではなく、APPコネクト経由で選択したスマートフォンアプリにワイヤレスでアクセスできるなど各種の通信機能を備えている。

そして、もうひとつの必須パッケージオプションが「テクノロジーパッケージ(アクティブに装着の場合16万9000円/スタイルとRラインに装着の場合16万5000円)だ。その中心アイテムである「IQ.ライト」はぜひともほしい。左右のヘッドライトモジュールにそれぞれ22個のLEDを採用、最大種類の配光機能を起動させて路面を照らす先進のライティングシステムだ。

このほかにも、チルト&スライディングサンルーフと高級オーディオブランド「ハーマンカードン」の上級サウンドシステムをセットにした、ラグジュアリーパッケージ(23万1000円)も用意されている。(文:Motor Magazine編集部 阪本 透/写真:永元秀和、フォルクスワーゲンAG)

画像: ゴルフ8には好みに応じて室内照明のカラーを設定できる機能が全車に標準装備される。「アクティブベーシック」と「アクティブ」は10色、「スタイル」と「Rライン」は30色から選択可能。ドライブモードに合わせて予め照明モードを設定することもできる。

ゴルフ8には好みに応じて室内照明のカラーを設定できる機能が全車に標準装備される。「アクティブベーシック」と「アクティブ」は10色、「スタイル」と「Rライン」は30色から選択可能。ドライブモードに合わせて予め照明モードを設定することもできる。

これが私のベストバイ:自動車評論家 岡本幸一郎氏が選んだのは「eTSI R-Line」

画像: スタイルとの価格差は5万円。GTIが出てもこれなら大丈夫。

スタイルとの価格差は5万円。GTIが出てもこれなら大丈夫。

迷わずRラインですね。せっかくこう仕様があるなら、選ばずにいられません。他のゴルフとは異質のアグレッシブなスタイルを見るだけで、乗る前からすでに気分がアガるし、スポーティなシートの着座感も気に入っています。専用の足まわりと俊敏なハンドリングもほどよく尖っていて、この味付けがもっとも運転が楽しめるのもいうまでもありません。

乗り心地がよっぽど硬かったら考えものだけど、これぐらいなら頻繁に乗せる家族にも許してもらえることでしょう。コスパ的にも「Style」とわずか5万円差でこれほど魅力的な装備が充実するのだから、むしろ割安だと思います。いずれGTIが出ても、これで十分に満足できそうな気がしています。

これが私のベストバイ:本誌編集者 神原 久が選んだのは「eTSI Style」

画像: 速さ、快適性、スタイルなどあらゆる意味でバランスがいい。ステアリングヒーター/シートヒーターをはじめ、マイクロフリース地を使ったeTSIスタイル専用のスポーツコンフォートシートも標準装備。

速さ、快適性、スタイルなどあらゆる意味でバランスがいい。ステアリングヒーター/シートヒーターをはじめ、マイクロフリース地を使ったeTSIスタイル専用のスポーツコンフォートシートも標準装備。

もっとも「我慢することが少ない」スタイルが気に入った。アクティブはこと街乗りに関しては不満はないけれど、高速走行ではやはり力及ばないことがある。乗り心地も、やや軽さが際立つ感じだ。対照的にRラインは素直にカッコいいし、フットワークも引き締まっている。ただし乗り味は少しとがっていて、細かい突き上げ感を覚えた。

スタイルはそのRラインと同じ1.5Lターボを搭載するが、これがそうとう速い。しかも比較的マイルドな乗り心地で、同乗者に優しい。ワンポイントでアクティブと差別化されたほどよいオシャレ感は、女性受けしそう。まずはスタイルを買っておいてRが出たら自分用に買い足し、こちらは奥さん用にする・・・なんて野望を抱くのもいい。

これが私のベストバイ:本誌編集長 千葉知充が選んだのは「eTSI Active」

画像: 48V化で1Lであっても十分に満足できるパフォーマンス。装備面では質感こそeTSIスタイルには及ばないもののチープな感じは皆無。

48V化で1Lであっても十分に満足できるパフォーマンス。装備面では質感こそeTSIスタイルには及ばないもののチープな感じは皆無。

購入を前提にベストバイを考えるとクルマそのものの完成度だけではなく、バリューフォーマネーという視点も欠かせない。基本性能が高いクルマはベースグレードで十分満足できるが、それをまさに実証するのがゴルフVIIIのアクティブ(312.5万円)である。実は300万円を切る価格のアクティブベーシック(291.6万円)も気になるのだが、今回は試乗できなかったためアクティブを選ぶ。

300万円超のゴルフになるが、48V MHEV、デジタル、充実のADASなど今、必要なものがすべて揃っている。ただもう少し予算に余裕があるならオプションのディスカバープロパッケージ(19.8万円)とテクノロジーパッケージ(20.9万円)はぜひとも選んでおきたい。

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