RB式はパワステなくても比較的軽く、ラック&ピニオンはよりダイレクトに
近年のクルマのステアリング機構に使われるギアボックスは、円形の歯車(ピニオン)と、これとかみ合うように歯切りをした平板(ラック)の組み合わせによって操舵するラック&ピニオン形式が主流となっている。
これよりも以前は、RB式が採用されているモデルも多くラインナップされていた。RBとは、ステアリング操舵方式のひとつで、正式にはリサーキュレーティング・ボール(Recirculating Ball)と言う。またボール&ナット式とも言われている。
この機構では、ステアリングホイールを回すとステアリングシャフト=ウオームシャフトも回転してボールナットが動く。これと連動して、ギアで噛み合った扇型のセクターギアが回転する仕組みだ。その回転がタイロッドに伝えられタイヤが切れることになる。
ポイントは、ウオームシャフトとボールナットの間に入ったボールベアリングで、これが転がることでスムーズな動きを可能としており、またハンドル操作を軽くできるというメリットもあった。しかしその反面、「ダイレクト感に欠ける」や「部品点数の増加」というデメリットもあった。
その後の展開の中心になってきたのがラック&ピニオン式だ。これは、ステアリングシャフトの車輪側の先端に備えたピニオンギヤと、タイヤと連結するハブナックルにつながるステアリングラックのラックギアがかみ合うというシンプルな機構だ。
これはもともとレーシングカーに用いられていた機構で、RB式に比べると操作感をダイレクトにする特徴を持っている。その反面で操舵力が重くなることもありトヨタ 2000GTなどの例外を除いて普及しなかった。その後、1978年にスポーティ路線で売り出したKP61スターレットに採用されたのが大衆化の一歩となった。それまでのクルマのロックトゥーロックが4回転ほどだったのに対して、KP61は3回転とかなりクイックな設定とされてこのスポーティさは大きな魅力だった。
この形式は一般的に、ステアリングが重くなるためドライバーを選ぶことや、急激な入力がタイヤに入ったときのキックバックも大きいなどのデメリットがあったが、パワーステアリングの普及を追うように採用されるモデルも増えていった。現在ではほぼ100%のクルマがこの形式を採用するに至っている。(文:Webモーターマガジン編集部 飯嶋洋治)