よりたくましさを感じるフロントフェイスに進化
「最近ね、こういうところを走るの、わりと得意になってきたのよね〜、ラリーに参戦しているからかな(笑)」なんて、思わず含み笑いしたくなるような狭い林道を分け入りスバル フォレスターは進んでゆく。
都心からクルマで1時間半ほどのところにある、「SUBARU里山スタジオ」を目指す。あたりは自然豊かで、手入れも必要な感じの雰囲気。ここまで山道を上って来る途中に、「まむし注意!」の看板があったくらいのところなのだ。しかもこの林道、道幅が狭く、路面もまだまだ整備発展途上という感じだし、さらに勾配が結構キツい。フツーのクルマでは、ちょっと怯んでしまう人もいるかもしれないレベルの道である。
最近の私は、むしろこういう道の方が得意だったりするというのは言い過ぎだが、決してキライではないのだ。とはいえ、場所によってはラリーのSSというより、冒険ラリーレイドくらいの路面と言った方がいいくらいのところもあったけれど・・・(笑)。
まぁどちらにせよ、スバルの4輪駆動ならなんてことはないし、ましてやフォレスターなら余裕の走りを見せてくれる。以前、冬に走った雪道もそうだけど、フォレスターでこういうところに来ると、ラリーレイドモンゴルを思い出して、ワクワク感を抑える方が実は大変なくらいなのだ。
第5世代の「フォレスター」は、取り回しの良さと室内の広さを両立したパッケージングがポイントとなるモデルだが、それに加えて、今回の大幅改良で新デザインコンセプト「BOLDER」表現が取り入れられ、よりSUVらしいたくましさが感じられる顔立ちに生まれ変わった。
今回試乗したグレードのX-BREAKは、渋いマグネタイトグレーメタリックのボディカラーと差し色のレッドオレンジが相まって、華やかさとワイルドさを上手くバランスさせていてまとまり感がある。
無論、顔だけで速くとか逞しく走れるわけではないが、スバルのデザインは機能性もきちんと考慮されているゆえ、狭い林道で邪魔になる要件等は勘案されてのカッコ良さなのが素晴らしい。アプローチアングル20.2度、ランプブレークオーバーアングル21.1度、デパーチャーアングル25.8度というラフロードの走破性スペックはきちんとキープされている。
また足元には新デザインのアルミホイールが採用されているが、実は足まわり自体も改良が加えられている。端的に言ってしまうと、しなやかさとスポーティさが両立されたということになるのだが、実はこのしなやかさこそ、こういったシーンでは重要なカギとなるのだ。
というのも、フォレスターはフラット路面のサーキットなどで威力を発揮するというよりは、220mmという最低地上高のゆとりを生かし、意外と路面の荒れているところも多い一般道に加え、高速道路、そして今回のような林道、さらにはオフロードと、さまざまな状況をクリアしなければならないからである。
しかも、フラットではない路面を走るとなると、ある程度のストロークが必要になる。とくにオフロードとなればなおさらだ。4輪がバラバラの高さに位置するということもあり得るから、それなりのストローク量も必要となる。しかし、そこにばかり特化すると、今度は高速域でビシッと走るのが難しくなってくる。これを両立させるのが、スバルの技術力の見せ所というわけなのだ。
今回の林道走行では、かなりの段差があって、しかも1輪の中でもタイヤの接地面が限られた部分しかないようなオウトツの多い路面もあり、加えて砂が出たり、葉が落ちていたりという、かなり滑りやすい状況。つまり1輪が舗装路、1輪が砂の上、1輪が水溜りの上、1輪が岩の上などという、4輪それぞれがまったくバラバラの状態の路面に乗っているなどということもあったのだ。
それでもしっかりと路面のインフォメーションをドライバーに伝えながら、安心感を持って悪路をクリアしてくれるまでに仕上げられていたのは見事だ。フォレスターはスバル独自の4WDレイアウトであるシンメトリカルAWDを採用しており、水平対向エンジンが左右対称に配置され、トランスミッション、プロペラシャフトと一直線に配置されている。
さらに、路面状況や走行状況に応じて前後に最適なトルク配分制御を行うアクティブトルクスプリット4WDを採用している。これだけの路面のインフォメーションが得られるのは、まさにシンメトリカルAWDの賜物と言えよう。