2.0TSIエンジンは200psにパワーアップ
フォルクスワーゲンのコンパクトSUV、ティグアンの販売が好調だ。日本市場には昨年2008年9月から導入され、その後5カ月間で1800台のセールスを記録。ドイツ本国では発売直後からSUVセグメントの登録台数でトップの座に躍り出た。
世界的不況の逆風の中でも、売れるクルマは売れる。ティグアンの成功はそれが「フォルクスワーゲン製」であることと、リーズナブルな価格設定(367万円)だったからと私は思う。見栄を張る輸入車ではなく、ユーザーにとっては生活を共にする「頼りになる相棒」といったポジションのクルマだ。これはポロ、ゴルフ、パサートにしても同様だろう。
ティグアン(Tiguan)の車名は、虎(Tiger)とイグアナ(Leguan)からの造語。ダイナミックさとタフなイメージを併せ持つこのネーミングは、ドイツの自動車専門誌「アウトビルド」の読者参加キャンペーンを通じて決まったという。
日本仕様のティグアンにはこれまでトラック&フィールドというサブネームがついていたが、今回紹介するのはスポーツ&スタイルと名乗る新しいバリエーションである。
トラック&フィールドがオフロード走破性の高さをアピールするエクステリアデザインに対し、スポーツ&スタイルはオンロード指向を打ち出している。具体的にはフロントバンパーがボディ下部まで延び、あたかもスポーツセダン的なルックスとなったことだ。オフロード走行時のデパーチャーアングルは多少犠牲になるが、見栄えははるかにスタイリッシュ。タイヤサイズも16インチから17インチとなり、新デザインのアルミホイールが装備されたことで足元の逞しさもグンとアップした。
搭載される直噴2Lターボエンジンはトラック&フィールドと同じ型式のCAWだが、チューニングが異なり170psから200psに高出力化されている。最大トルク値(280Nm)は変わらない。
試乗ルートは大磯から西湘バイパスに乗り、箱根ターンパイク頂上までの往復。走り出してあらためて感じたことは剛性の高さだ。
ティグアンのボディは、フロント部分から中心部まではパサート、リア部分はゴルフVのものをベースに新規に設計されたもので、単にコンポーネンツをそのまま流用したものではない。この手法はリトラクタブルトップを持つEOS(イオス)で先行している。このクラスにおいて剛性、安全性、静粛性ともに世界トップレベルのボディといって差しつかえない。
西湘バイパスは路面の目地段差が大きく、突き上げがくる道路だが、ティグアンはその入力をしなやかにいなす。高剛性ボディとリバウンドバンプストッパー付きのダンパーの恩恵が大きい。タイヤサイズが17インチとなったが乗り心地にマイナス効果はない。基礎(土台)と上屋がしっかりしているクルマは安定・安心感があり、疲れない。フォルクスワーゲン車の美点はそこにある。
エンジンの30psのボーナス分は西湘バイパスでは感じ取れなかった。なにしろ最大トルクが1700rpmから5000rpmまでの広いゾーンで発生するのでアクセルペダルを床まで踏みつける必要がないのだ。ターンパイクの上り急勾配も楽勝で走り抜けるが、そのときにトラック&フィールドよりいくらかパンチがあるかな、と思ったくらいである。
4WDシステムは最新の4MOTION(第4世代のハルデックスカップリング式)で、タイムラグを感じさせない俊敏なトルク配分を行う。つまりドライバーは先入観念なしに運転していればいい。ティグアンにはラフロード走行を支援する5つの機能(ヒルディセント、アクセルペダル特性変更、ギアモード選択、電子制御デフロック、ABS制御特性変更)を起動させる「OFF ROAD」ボタンがあるが、残念ながら限られた試乗時間内で試すことはできなかった。
総じてバランスのとれたティグアンのハンドリングと動力性能、入念な作りに◎をつけたい。価格は422万円とトラック&フィールドの55万円高だが、HDDナビ、17インチタイヤ&アルミホイール、スポーツシートなどが標準装備となるから、やはりそれなりの値頃感はある。(文:Motor Magazine編集部/写真:村西一海)
フォルクスワーゲン ティグアン スポーツ&スタイル 主要諸元
●全長×全幅×全高:4430×1810×1710mm
●ホイールベース:2605mm
●車両重量:1640kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1984cc
●最高出力:147kW(200ps)/5100-6000rpm
●最大トルク:280Nm/1700-5000rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●10・15モード燃費:9.6km/L
●車両価格:422万円(2009年当時)