トーションビーム式サスペンションは低コストで軽快な走りを実現する
トーションビーム式は、FF車のリアに多く採用されるサスペンション形式だ。構造を簡単に説明すると左右の車輪をトーションビーム(アクスルビーム)で連結し、その両端からトレーリングアームが伸びてボディ側に繋がる形になる。トレーリングアームで前後方向の位置決めをして左右方向はラテラルロッドで位置決めをするのが基本的な構成となる。
![画像: 「きちんと知りたい!自動車サスペンションの基礎知識(飯嶋洋治 著/日刊工業新聞社)より転載。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2021/10/14/6d55eebe4cfbf61406ea4c67726d38aca9a8eb06.jpg)
「きちんと知りたい!自動車サスペンションの基礎知識(飯嶋洋治 著/日刊工業新聞社)より転載。
路面からタイヤを伝わった入力はスプリングが受け止め、その動きをショックアブソーバーが減衰するというのは他のサスペンション形式と変わりはない。
サスペンションの類別としては車軸懸架(リジッド)式となる。しかし、トーションビームにねじりをもたせて、トレーリングアームもねじれ方向に対してある程度柔軟であることから、半独立懸架的な動きを可能とするサスペンション形式だと言える。
![画像: スズキのスポーティカーであるスイフトスポーツもリアにトーションビーム式を採用して高性能を実現している。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2021/10/14/8201417784bc9bbdb4a1921daea4f606a0f0817f_xlarge.jpg)
スズキのスポーティカーであるスイフトスポーツもリアにトーションビーム式を採用して高性能を実現している。
トーションビーム式のバリエーションとしては、トレーリングアームのピボットをトーションビームで連結したものや、トレーリングアームの中間にトーションビームを連結したものもある。この場合、横方向の力をトレーリングアームで受けとめられるので、ラテラルロッドが不要となる。
基本的な動きとしては、独立懸架式のトレーリングアームと同様に上下動でキャンバー変化がおきない。しかし、コーナリング中などでトーションビームにねじれが発生するとその分がキャンバー変化となる。
![画像: スイフトスポーツのサスペンション。フロント(左)はストラット、リア(右)にトーションビームだ。ビームの位置はトレーリングアームの中間としているため、ラテラルロッドは装着されていない。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2021/10/14/d8862eafddd6fa6b38f68fee7728c3c771362495.jpg)
スイフトスポーツのサスペンション。フロント(左)はストラット、リア(右)にトーションビームだ。ビームの位置はトレーリングアームの中間としているため、ラテラルロッドは装着されていない。
トーションビーム式の最大のメリットは、構造がシンプルなためにローコストなことだ。そのために比較的廉価なクルマに多く採用されてきまた。ロール剛性もトーションビームで調整でき、リジッド式ながら、ビームに柔軟性を持たせることで独立懸架的な動きができるのもメリットだ。
いわゆるスポーティなコンパクトハッチなども、このトーションビーム式サスペンションのおかげで、手頃な価格で軽快な走りを実現してきたと言える。
デメリットもある。サスペンションとボディの結合を2本のトレーリングアームだけで担っており、そこを支えるゴムブッシュに大きな負担がかかることだ。ブッシュで剛性を確保しなければならないのは当然だが、そのためにハーシュネスが犠牲になることもあるのだ。(文:Webモーターマガジン編集部 飯嶋洋治)