いま、12気筒エンジンを搭載するSUVの双璧として強固な存在感を誇るベンテイガ。ラインナップにはV8エンジン搭載モデルも用意され、普遍性という意味ではそちらに分がある。では、なぜトップモデルとしてこの「スピード」が揃えられているのか。その価値観を実感してみた。(Motor Magazine 2021年11月号より)

W12が必要となる理由は、それ独自の感触があるから

ハイブランドが手掛けるSUVの先駆けとなった存在、それがベントレーのベンテイガである。2015年秋に登場して以来、バリエーション追加とともに細かな熟成を重ねてきたが、2020年夏には初めてとなるビッグマイナーチェンジが施された。

エクステリアは、最新世代のコンチネンタルGTやフライングスパーと同じランゲージが用いられ、フロントまわりはグリルの立体感を高めたシェイプとなり、クリスタルカット調のテクスチャーが加えられたヘッドライトが配される。リアではゲートまわりのデザインを一新、アーモンドシェイプのテールライトは、一瞥で新型とわかるポイントとなった。

エクステリア以上に手の込んだ変更を加えられているのが、インテリアだ。スマートフォンとの親和性を高めた新しいインフォテインメントシステムに対応する10.9インチタッチパネルスクリーンは、デジタル化されたメーターパネルと近接した高さでセンターコンソールに収められるため、その上に配されるエアベントはウイングエンブレムとシンクロしたデザインに変更、伝統のブルズアイベントは左右端に配される。

また、シートも設計が変更されて新しい骨格やフォームを採用。後席のニースペースが最大100mm拡大されたほか、オプションで後席独立4人乗りや3列7人乗りなどのシートレイアウトが選べるようになっている。これに合わせて、ドアトリムのデザインも全面的に変更された。

画像: 2020年の大幅マイナーチェンジにより、リアまわりのデザインもリフレッシュされた。テールライトの造形もクラシックなものとなってひと目で識別ができる。

2020年の大幅マイナーチェンジにより、リアまわりのデザインもリフレッシュされた。テールライトの造形もクラシックなものとなってひと目で識別ができる。

いま、ベンテイガに用意されるパワートレーンのバリエーションは3種類。4L V8ツインターボ、6L W12ツインターボ、そして2021年の年末~2022年の年頭にかけて日本上陸が予定されている3L V6ターボ+モーターのプラグインハイブリッドだ。

現在の販売的主力になっている4L V8エンジンは、ポルシェが開発を主導したユニットで、同門のランボルギーニやアウディも独自のチューニングを加えたものを搭載している。2基のタービンを90度のVバンク間に置くホットVレイアウトを採用しており、ベンテイガ用のユニットは550ps/770Nmを発生。0→100km/h加速4.5秒、最高速度は290km/hをマークする。

対する6L W12は、フォルクスワーゲングループの総帥としてマルチブランド化とともに各々の成長を成し遂げたカーガイ、フェルディナント・ピエヒ氏の長年の夢の結晶だ。新世代ベントレーの主力ユニットとして花開いたそれは2018年、アウディA8のフルモデルチェンジを機に、大幅に手が加えられている。

ツインターボ化によるアウトプットは635ps/900Nmに達し、0→100km/h加速は3.9秒、最高速度は306km/hを誇る。その最高速度はランボルギー ニウルスよりも1km/h速く、それをもってベンテイガは世界最速のSUVを謳う。

画像: 同門だけでなくハイエンドプレミアム界におけるベントレーの意義を理解できるのがW12エンジンの存在。

同門だけでなくハイエンドプレミアム界におけるベントレーの意義を理解できるのがW12エンジンの存在。

ちなみに現在はアウディA8のW12搭載モデルは本国でもディスコンになっており、狭角V6を片バンクとするこの極めてユニークな気筒ユニットは、ベントレーのみに与えられるものとなった。

試乗モデルはそのW12を搭載した「ベンテイガ スピード」。当然ながらもっとも高額なグレードとなる。内装にコントラストステッチやパールフェイスの時計など加飾系のオプションも与えられているが、基本的な設えは標準仕様だ。

その豪華さは言わずもがなだが時とともに、見た目が華美であることよりも、各々のマテリアルが本物であり上質であることが彼らの真の世界観であることが伝わってくる。シートやインテリア表皮の香りや鞣(なめ)しの肌触り、手に触れるとひんやりとした感触が伝わるエアベントなど、五感に染みる「いいもの感」に囲まれる心地良さはなんとも離れがたい。

パイプオルガンで音色を調律するノブの「ストップ」を模したという風量調節レバーの操作感などは、触感をもってベントレーらしさをアピールするためのディテールとして、自らが意識して継承しているだろうことを理解できる。

This article is a sponsored article by
''.