いま、12気筒エンジンを搭載するSUVの双璧として強固な存在感を誇るベンテイガ。ラインナップにはV8エンジン搭載モデルも用意され、普遍性という意味ではそちらに分がある。では、なぜトップモデルとしてこの「スピード」が揃えられているのか。その価値観を実感してみた。(Motor Magazine 2021年11月号より)

思うがままに味わう荘厳さこそ他に代えられない妙味

W12エンジンを搭載するベンテイガの存在感は、その始動時からしてすでに独特。「クルルッ」という軽いセルモーターの作動音とともに「シュワン」と目覚めるエンジンは、世界最速の称号を持つものだとはにわかに思えないほどジェントルであり、対すればV8モデルの方が猛々しい。

走り始めての感触はやはり重厚さが先に立つ感じで、このあたりもV8モデルとはフィーリングを異にするところである。ただし、そのズシッとした手応えは、決してネガティブな印象ではない。

鼻先でシューンと静かに回るW12モデルからは、右足へわずかに力を込めるだけで、キックダウンもなしに欲しい加速を意のままに引き出せる。しかも、その加速の質は粒立ちが実に細かくて「絹ごし」のような滑らかさだ。

それは曲がっても然りで、V8モデルは初手からキビキビと応答する軽快感が押し出されているのに対して、W12モデルは据わりの良さや心地良い粘りが表現されているように窺える。

数値化すればその違いは可視化されるものの、体感的な速い遅いの話をすれば大差は感じられないこのふたつのエンジンをどう使い分けるか。その点において、ベントレーはあえて走りの動的質感でこのような差別化を図ってきたのだろう。ゆえに運動性能、とくにアジリティを重視するならば、V8エンジン搭載モデルの方に分があることは間違いない。

さりとて、W12モデルでもライントレース性はすこぶる正確で、旋回姿勢にも不安はまったくない。70:30~15:85の範囲で自在に前後駆動配分を制御する4WDシステムや、48Vシステムの高電圧により素早く自然なロールコントロールを実現したベントレーダイナミックライドも、効果的な役割を果たしているのだろう。

画像: 堂々たる体躯を滑らかに変化させながら、極めてスムーズに走り抜けていく。その重厚かつ快適で、何より心地よい走行感覚は「スピード」ならではのテイストだ。

堂々たる体躯を滑らかに変化させながら、極めてスムーズに走り抜けていく。その重厚かつ快適で、何より心地よい走行感覚は「スピード」ならではのテイストだ。

そして、これらのデバイスを統合制御しながら、常に最適な運転環境へと導いてくれるのが、ドライブモードセレクターに用意された「B」モードだ。

難しいことはクルマにまかせて、天候も環境も気にすることなく気筒の荘厳なフィーリングを思うがままに味わい尽くせる、それがベンテイガ スピードの妙味なのだろう。クルマのパワートレーンといえば「電動化」が喧(かまびす)しい昨今である。内燃機を回し続ける機会にリミットも見え始めたいま、その金字塔たるW12の体験は、何ものにも代えがたい時となるだろう。(文:渡辺敏史/写真:小平 寛)

ベントレー ベンテイガ スピード 主要諸元

●全長×全幅×全高:5144×1998×1742mm
●ホイールベース:2995mm
●車両重量:2508kg
●エンジン:W12DOHCツインターボ
●総排気量:5950cc
●最高出力:467kW(635ps)/5000-5750rpm
●最大トルク:900Nm/1500-5000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・85L
●WLTPモード燃費:6.9km/L
●タイヤサイズ:285/40R22
●車両価格(税込):3345万円

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