じゃじゃ馬ほど乗りこなす快感がたまらない
A45とともに直4の名機を搭載しているモデルとして紹介したいのが、ルノーのメガーヌR.S.トロフィー(以下、トロフィー)だ。A45に比べると300psと見劣りするかもしれないが、試乗してみると、むしろこちらの方がパワフルなんじゃないか・・・、と勘違いさせるほど元気だ。それは、フットワークも含めて、このクルマが「じゃじゃ馬」的な性格を持っていることも関係していると思われる。
トロフィーに搭載されているエンジンの排気量はA45より200cc小さい1.8Lで、ターボで過給する。タービンにはセラミックボールベアリングシステムを採用しており、応答性の向上を図っている。
では、トロフィーにワインディング路で試乗した印象をお伝えすると、「痛快」のひと言に尽きる。まずは加速感がとても気持ちいい。1.8Lとは思えないほど1460kgのボディを加速させてくれる。最高出力300ps/最大トルク400Nmでも十分に速くて楽しい。
しかし、このクルマの真骨頂はコーナリングだ。「所詮FFでしょ」と言うなかれ。悪しきFFらしさは微塵も感じさせず、うまく躾けられた4コントロールのおかげもあって、ドライバーの意のままに曲がってくれる。ただ、わだちにハンドルを取られやすいので、運転に緊張感が伴うが、まあ、そのくらいじゃじゃ馬を乗りこなす方が楽しいとも言える。
こうして直4でもワクワクできるエンジンは存在する。むしろコンパクトなクルマに搭載する直4だからこそ、人馬一体でコントロールする楽しさがあるのだ。(文:Motor Magazine編集部 加藤英昭/写真:永元秀和、小平 寛)
メルセデスAMG A45S 4マティック+ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4445×1850×1410mm
●ホイールベース:2730mm
●車両重量:1640kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●総排気量:1991cc
●最高出力:310kW(421ps)/6750rpm
●最大トルク:500Nm/5000-5250rpm
●トランスミッション:8速DCT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・51L
●WLTCモード燃費:11.4km/L
●タイヤサイズ:245/35R19
●車両価格(税込):824万円
ルノー メガーヌR.S.トロフィー 主要諸元
●全長×全幅×全高:4410×1875×1465mm
●ホイールベース:2670mm
●車両重量:1460kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●総排気量:1798cc
●最高出力:221kW(300ps)/6000rpm
●最大トルク:400Nm/3200rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・47L
●WLTCモード燃費:12.2km/L
●タイヤサイズ:245/35R19
●車両価格(税込):494万円
EPILOGUE:ハイパフォーマンスエンジンへの希望と期待
「純ガソリンエンジン車に愛を込めて」特集はいかがでしたか。
次号の特集や企画などを決める編集会議の席上では、編集部員それぞれが取材、試乗したクルマの印象を語りつつ、それがどれほど良かったかのかといった印象を話合うことがよくある。それが企画決定のきっかけになることもあるからだ。そうした時によく遡上にのせるのが、この特集でとりあげた、12気筒や10気筒、8気筒、6気筒、4気筒といったエンジンたちなのである。
今回の特集では、ピュアICEに限って取り上げた。もちろんプラグインハイブリッド(PHEV)やマイルドハイブリッド(MHEV)、ディーゼルエンジンにも素晴らしいエンジン車があるのは承知しているが、それはまたの機会にして、電動化されていないガソリンエンジンに絞らせてもらい特集したのである。
テーマの中にあるのは、これからもずっと残って欲しいエンジン。そしてそのエンジンを搭載した最新モデルを中心にセレクトした。エンジンは、単体の魅力もさることながら、それがクルマ(ボディ)と組み合わされることで化学反応を起こし、素晴らしいクルマになる。つまりエンジン単体の魅力ではなく、クルマと一体になった時に完成形になるのである。
そのどれもが、私たちを魅了してくれたエンジンとクルマたちばかりである。運転していて、または走らせて幸福度や満足度が高いものを選んだつもりなので、読者のみなさんも機会があればその素晴らしさを味わって欲しい。
エンジンやエンジン搭載車を選び切れない場面もあったが、そこはなんとか折り合いをつけこのような特集になったのだ。
このような特集を組んだからと言って、Motor Magazineは電動化を否定しているわけではない。むしろ歓迎している。電動化されることでクルマが、そしてこれらの素晴らしいエンジンが今後も作り続けられ、クルマの魅力がさらに上がることは大歓迎なのである。
ICEを積まないBEV化も拒否していない。つまりは、選択肢として純ICE車も電動化されたクルマもエンジンを搭載しないピュアEVもFCEVもあらゆる選択肢があってしかるべきだろう。ICEは反対、BEVは賛成という偏った考えではクルマは今後生き残れないだろう。あらゆる選択肢を排除してはいけない。
もしかしたら次は、「PHEVに愛を込めて」という特集を組むかもしれないしBEVへの愛を語るかもしれない。その時は、また全力で愛を語らせてもらうつもりである。大の大人が愛だの恋だの語るな、と思われる読者もいるかもしれないが、好きなものへの愛情を語らないことほどつまらない人生はない。
Motor Magazineは、クルマにこれからも期待を込め、そして愛を注ぎ続けるつもりだ。(文:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:井上雅行)