A4アバントやA3を超える人気モデルとなる可能性も
ところで、今回テストした2台のQ5には、フットワークの印象に影響を与えそうなオプションアイテムがそれぞれ装着されていた。すなわち、いずれの印象も、これらオプションの影響を排除した、ベーシックな仕様のモデルの場合とは異なる可能性があることはまず断っておきたい。
今回テストした両車が共通して味わわせてくれたのは、想像を遥かに超えるスポーティなフットワークだった。すでにお伝えしているように、Q5のベースとされたのは、その走りのクオリティの高さで定評のあるA4シリーズ。加えて、やはりSUVとはいえ、「サマータイヤ」を装着することなどもあってか、Q5はむしろそんなA4と同等か、むしろそれすらを凌ぐかのような逞しいフットワークの仕上がりを実感させてくれたのだ。
車速の変化に対してアシスト量変化も大きいパワーステアリングのフィーリングにはもう一歩の自然さが欲しいと思ったし、ステアリング系自体の剛性感もより高めてもらいたいといった要望はある。だが、ワインディングロードでの走りのテンポを高めていってもロール感はあくまでリニアだし、何よりもこうしたモデルであるにもかかわらず、そのグリップ力に全く不満が生じず、不愉快なアンダーステア傾向を示したりしないのは大したものだ。
ルーフキャリアの使用時には、重心高の変化を想定して作動値を自動変更するという凝ったESPも装着されているが、それが早々には介入しない点も、フットワークのポテンシャルの高さを証明している。当然ながら、少々アップテンポな走りでもだらしなくタイヤのスキール音が発せられたりもしないから、多少スポーティな走りにトライしただけで、恥ずかしい思いをするようなこともない。
今回試乗した2Lモデルは、標準サイズ比で2インチのアップとなる20インチのタイヤを履いていたが、これは「見た目上で足元の逞しさをグンと増す」という効用の他には、どうやら大きな美点は持たないようだ。
むしろ、低速域で凹凸を乗り越えるとばね下の重さを大きく感じさせられるのは「教科書通り」の印象。試乗会を含め、標準装着される18インチタイヤ装着車のチェック機会がなかったのは残念だったが、前出20インチタイヤ装着車はもとより、19インチタイヤ装着車でも路面凹凸を乗り越えるとわずかに発生気味となっていたドラミング（低周波ノイズ）が気になるならば、タイヤは標準サイズの18インチ仕様に留めておくのが無難かもしれない。
それにしても、Q5は予想を超えるダイナミズムの持ち主だった。デビュータイミングの遅さが功を奏した部分もあるのかも知れないが、走りのシーンによってはベースとなったA4以上の洗練度を感じたのは「嬉しい誤算」というべきかも知れない。
惜しむらくは、やはり日本での使用にあたっては気を使うことになりそうな1.9mという全幅や、アウディが得意とする軽量化技術の恩恵を実感することのできない1.9トンという車両重量ということになろうか。
このあたりで、アウディ流儀の「革命」が感じられないのは、ちょっと残念にも思う。しかし、それはそれとして、いかにも昨今のアウディの狙いどころであるプレミアム性の高さをたっぷりと実感できるモデルであることは、間違いないところだ。A3やA4とともに、アウディラインアップの基盤を固めるニューモデルの堂々の誕生である。（文：河村康彦／写真：小平 寛）
アウディならではの作り込み品質を誇るインテリア。写真はQ5 3.2FSI クワトロ。
アウディ Q5 2.0TFSI クワトロ 主要諸元
●全長×全幅×全高：4635×1900×1650mm
●ホイールベース：2810mm
●車両重量：1870kg
●エンジン：直4 DOHCターボ
●排気量：1984cc
●最高出力：155kW（211ps）／4300−6000rpm
●最大トルク：350Nm／1500−4200rpm
●トランスミッション：7速DCT（Sトロニック）
●駆動方式：4WD
●10・15モード燃費：10.6km／L
●タイヤサイズ：235／60R18
●車両価格：569万円（2009年当時）
アウディ Q5 3.2FSI クワトロ 主要諸元
●全長×全幅×全高：4635×1900×1650mm
●ホイールベース：2810mm
●車両重量：1930kg
●エンジン：V6 DOHC
●排気量：3196cc
●最高出力：199kW（270ps）／6500rpm
●最大トルク：330Nm／3000−5000rpm
●トランスミッション：7速DCT（Sトロニック）
●駆動方式：4WD
●10・15モード燃費：9.1km／L
●タイヤサイズ：235／55R19
●車両価格：660万円（2009年当時）
