2009年、BMW X3やメルセデス・ベンツ GLKなど、コンパクトSUVというジャンルのクルマが注目を集める中、アウディからQ5がデビューした。アウディが考える「プレミアムコンパクトSUV」とはどんなクルマだったのか。Motor Magazine誌はこのモデルに注目し、特別企画を組んで試乗テストを行っている。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年7月号より)

2Lで十分と思えるが、自然なパワーフィールでは6気筒モデルに軍配

日本に導入のQ5は、2L 4気筒モデルと3.2L V6モデルという2タイプの展開。最高出力では211psと270psと大差がつく両者だが、興味深いのはそれぞれの最大トルク値だ。実は4気筒ユニットにターボチャージャーが与えられたことで、そのデータには「逆転現象」が生じている。そうした数字上の差とはまた別に、2種類のエンジンが生み出すパワーフィールの違い、走りのキャラクターの違いも興味深いものだった。

最初にQ5の走りを体験したのは4気筒モデル。まずは箱根周辺を舞台に開催された試乗会での「味見」となったが、「これならば6気筒モデルなど必要ないのではないか」と実感させる走りのテイストを堪能させてくれることになった。

車両重量は1.9トン近くと決して軽量とは言えないが、ひとたび走り出せば、そうした重さは意識させられない。0→100km/h加速はわずかに7.2秒と発表されているから、そうした軽快さも当然といえば当然なのだが、いかに過給が与えられたとはいえ、2Lの4気筒モデルがここまで力強い加速感を味わわせてくれるとは、正直意外に思えるほどだ。

ただし、箱根周辺でのチェック走行を終えて、ストップ&ゴーの連続が避けられない街乗りのシーンへと乗り出してみると、それまでの好印象ぶりには少しばかり水が差された。

走り出しのほんの一瞬、イメージ的には「まだ過給が効いていないな」というゾーンでは、このQ5の動きは少々鈍いのだ。それゆえ、思わずアクセルペダルを踏み増ししてしまうと、今度は過給の立ち上がりに合わせて加速のゲインが高まり「飛び出し感」が強くなってしまう。今ひとつスムーズさに欠けたシーンを演じることになるわけだ。

ちなみに、縦置きレイアウトの7速DCT「Sトロニック」が行うシフト動作は、その素早さでは一級品だが、加速の途中で一転してエンジンブレーキを要求するような場面や、たまたまアクセルオフのタイミングがシフトアップの瞬間に重なるような場面では、時にバックラッシュをイメージさせる軽いショックを伴うこともあった。

また、前述のように、ペダルリニアリティに欠ける挙動も生じることから、微低速での移動はあまり得意科目とは言い難い。勾配の途中にあるガレージにバックで進入するといったシーンでのコントロール性は、正直、それほどいいいとは思えなかった。

ところで、比較のために持ち込んだ、そんなQ5と同じパワーパックを搭載するA4アバント(2.0TFSIクワトロ)の走りが、全般にはより軽快感が高く、また出足の一瞬での例の「ためらい感」もさほど気にならないものであったのは、ひとえにこちらのモデルの重量が150kgほども軽いからであった可能性が高そうだ。

加えれば、少々強い横風を受けた中での高速道路上での安定感も、やはりQ5のそれを明確に凌いでいることを実感した。今回厳密な計測はできなかったが、同パターンで走行をすれば、やはりこちらの方が優れた実用燃費をマークすることになるに違いない。

すなわち、いかに最新のQ5といえども、SUVが元来備えるウイークポイントはやはり厳然と残されているわけだ。これまで述べてきた居住性面でのメリットやスタイリング上の個性を、こうしたマイナス面といかにバランスさせていくかも、これからのSUVに求められる課題となるのだろう。

画像: 3.2FSI クワトロとほぼ同等、力感ではむしろ勝るのではと感じられた2.0TFSI クワトロ。

3.2FSI クワトロとほぼ同等、力感ではむしろ勝るのではと感じられた2.0TFSI クワトロ。

一方、前述のように4気筒モデルをテストドライブして、当初は「これならば必要ないのではないか」と思えたV型6気筒モデルは、アクセル操作に対する自然なパワーフィールという点で、ターボ付きの4気筒モデルを圧倒した。

まず、何と言っても出足の一瞬でのリニアな加速感が心地良い。比べてみればそれは大きな差ではないのかもしれないが、何しろスタートのたびに実感させられる部分であるために、その挙動の差は決して無視できないのである。

ただし、ひとたび車輪が転がり始めてしまえば、その後の加速の力感では実は4気筒モデルと大差を感じない。気筒数の差によるエンジン音質の違いは当然認められるものの、絶対的な静粛性はさほど変わらない。すなわち、やはり2種類の心臓での最も大きな差というのは、「アクセルペダル操作に対するリニアリティの差」というのが自分の受けた印象。

こうなると、いざ購入!という段階になって迷いそうなのが「どちらのモデルを選ぶか」ということだ。レザーシートやクルーズコントロール、ホイール径の違いなど一部装備差を含んでの価格差はおよそ90万円。これまで述べて来た様に絶対的な動力性能は4気筒モデルでも十二分なので、これで出足のスムーズさに改善さえ見られれば、個人的なチョイスも当然こちらでOKということになりそうだが。

画像: アクセル操作に対する自然なパワーフィールという点ではやはり有利な3.2FSI クワトロ。リニアな加速感が心地良い。

アクセル操作に対する自然なパワーフィールという点ではやはり有利な3.2FSI クワトロ。リニアな加速感が心地良い。

This article is a sponsored article by
''.