扱いやすいサイズのボディにパワフルな直列5気筒ターボエンジンと先進の駆動システムを採用したA3シリーズでもっともスポーティな「RS3」の最新型が登場した。最後になるであろう高性能エンジンと先進の駆動システムが織りなす走りをお伝えする。(Motor Magazine2021年12月号より)

RS3だけの数々の装備が走りへの期待を盛り上げる

アウディA3をベースにした初代RS3は2011年のジュネーブオートショーで公開され、同じ年の初夏に欧州で発売された(日本は未導入)。2.5L直ターボエンジンは340psに450Nmを発生し、0→100km/h加速が4.6秒、最高速度は250km/hを実現。当時としてはクラストップの性能を誇っていた。2015には第2世代のRS3が登場し、その2年後に367ps/465Nmから400ps/480Nmへとパワーアップしている。

ところが、2021年の3月にアウディのマルクス・デュースマン社長は2026年からICE搭載のニューモデルは販売せず、2033年までにICEを搭載するモデルの生産を順次中止していくという声明を出した。つまり、2020年から市場投入されているRS3のベースとなるA3は現行型が最後で、後継モデルはないということである。

当然、その結果としてRS3の去就が危ぶまれていたが、アウディは2021年の7月に後継モデル(開発コード:8Y)の存在を発表、ティザーイベントでその姿を公開。そして今回、待望の試乗会がギリシャのアテネで開催された。2日間にわたる試乗プログラムは3つのパートに分けられており、初日はアテネとその近郊の一般道路で試乗した。

ニューRS3には立体的なハニカムグリル、チェッカーフラッグがレイアウトされたLEDヘッドライトユニット、リアでは本の楕円形ビッグエキゾーストパイプ、そしてS専用デザインのディフューザーなどを装備。「RS」のオーラを漂わせている。

画像: 外側に大きく張り出したフェンダーやリアバンパーに施されたハニカム風の装飾などはひと目でRSモデルとわかる特徴だ。

外側に大きく張り出したフェンダーやリアバンパーに施されたハニカム風の装飾などはひと目でRSモデルとわかる特徴だ。

スポーツトリムで仕上げらているインテリアは、RSロゴ入りのスポーツシートを標準装備。下部が削られたスポーツステアリングホイールの12時位置にはボディカラーに合わせたポイントがマーキングされ、スポーク部分には新たにRSドライブモードスイッチが設けられている。バーチャルコックピットは基本的にはA3と同じだがグラフィックとメニューはRS専用でGメーターやシフトインジケーター、ギアオイルと冷却水の温度計が加わっている。

直5ターボエンジンの独特なビートを伴いながらギリシャの高速道路に入ると推奨速度の130km/hには瞬時に達し、アクセルペダルの余裕から想像するに最高速度の290km/hも単なるカタログ値ではなく、ある程度の平たん路であれば到達可能だと感じた。もちろん高速でのスタビリティは文句なしで、この速度域でのロングツーリングは快適だ。

一般路走行のあと、休む間もなくかなり広い駐車場のような場所に案内された。そこはプレスカンファレンスで説明されたRSトルクスプリッターを実体験する場所だった。まずは40km/hで円周路を周回、インストラクターの合図でフルスロットルにする。するとトルクはリア方向、正確にはコーナーの外側の後輪へ最大で100%伝達され、自分でも驚くほど簡単かつきれいな姿勢でドリフトに持ち込むことができた。しかもこの状態で大げさなカウンターステアを当てる必要がなく、ドライバーはアクセルワークに専念しているだけでいい。システムとエンジンが協調することでこの走りを可能にしているのだ。

座学ではなかなかピンとこなかったトルクスプリッターの効果を実体験できた。百聞は一見に如かず、というより実体験は紙の上の知識を遥かに超えることを改めて実感すると同時に、スポーツモデルを自在に操ることを可能にしたこの新システムに敬服した。

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