記録を読み出すだけでなく、証拠として「保全」する役割もある
昼食をはさんで午後からは、読み出しに使うCDRツールの取り扱いを学んだ。EDRは主に、SRSエアバッグモジュールの作動を制御するACM(Airbag Control Module)内に装着されている。そのデータを読み取るために「CANplus」、「CDR 900」と呼ばれる専用のツールを用いる。
これらの使い方が実は複雑でややこしい。取り扱いをしっかり覚えたつもりで、翌日の読み出し実技に臨んだのだが、いざ「現場」に臨むとバタバタ。スムーズに作業を進めるには、かなり慣れが必要だろう。
ちなみに座学では、読み出しに加えて「EDRデータの保全」についてもレクチャーを受けた。大前提として、読みだしたデータが該当する車両のものであることが明確に認定されなければ、裁判などで「証拠」として使うことはできない。そのためナンバープレート、車体番号などクルマの「身元」確認が必要になる。
ほかにも事故現場の様子や車両の破損状況といった情報を積極的に集めることも、CDRテクニシャンに求められる業務になる。そうしたさまざまな情報が、EDRのデータの信頼性を担保し、活用する幅を広げることになるからだ。
時代の変化とともに難しくなっていく事故原因究明を、強力にサポート
パイロットトレーニングを通して見えてきたのは今後、日本でもEDRの記録に基づいた事故原因の検証事例が一気に増えてくる可能性がある、ということだった。とくに先進運転支援システムの採用が当たり前となり、さらには自動運転のレベルが上がっていくにつれて、EDRでなければわからない要素がおそらくますます増えていく。
「その時、クルマになにが起こっていたのか」「その時、ドライバーはどんな運転操作を行っていたのか」などは、ドライビングレコーダーでもわかりはしない。検証には、適切に車載された記録装置から適切な方法でデータを読み出し、適切に解析するCDRの運用が求められることだろう。それはつまり、CDRテクニシャンが活躍するシーンが増えていく可能性がある、ということだ。
一方で、興味があってもすべての認定希望が受け付けられるわけではない。CDRテクニシャン認定を取得するためには、いくつかの前提条件がある。また認定を申請しトレーニングを受講、修了試験に合格してからも、実際に「仕事」を行うためには専用のツールを購入し、ソフトウェアライセンスを取得することが必要になることも、認識しておく必要があるだろう。それでも条件が合うのならばぜひ、資格の取得にチャレンジしてみて欲しい。
冒頭に述べた高齢者ドライバーの問題だけでなく今後、存在感を増していくであろう自動運転車が事故を起こしてしまった場合など、交通事故の原因解明を巡る課題は時代の変化や技術の進化とともに多様性を増している。だからこそEDRとCDRの今後の展開が、非常に興味深いのだ。(文:Webモーターマガジン編集部 神原 久/資料提供:㈱ボッシュ)
■CDRテクニシャン認定トレーニング 次回の日程
●開催日時:2022年1月20日(木)~21日(金) 9:30~18:30
●研修会場:ボッシュ株式会社 東京都渋谷区渋谷3-6-7
●研修費用:10万円(税抜き)
●参加対象:自動車の事業に携わっている方
●申し込み締め切り:開催2週間前
●詳細はこちらまで
ボッシュ CDRトレーニング事務局
TEL: 03-5213-6657 BoschServiceSolutions.JP@jp.bosch.com